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<筆者注>
本稿は、2014年4月9日の記者会見前に執筆されたものでありますが、そのまま掲載させていただきます。会見冒頭にあった小保方晴子氏(筆頭著者)の謝罪コメントにもあったとおり、筆頭著者も、共著者も、調査委員会に携わられた先生方も、一刻も早く研究に戻られ、この研究が進むことを期待いたします。

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 ノーベル賞級の発見だと持ち上げられた途端に、各方面から矢継早に疑義が示されて、世間からの非難が集中しているSTAP論文の筆頭著者は、それでもなお、所属する研究機関が公表した調査報告書に対して「到底容認できない」とコメントした。

 今回の論文に関しては、発見に対しても、論文の疑義に対しても、マスコミの扱いはあまりにも大きく、世論も称賛から不正へと急速に変化している。今後も、新しい事実が明らかになり、状況が変化する可能性はあるが、2014年4月7日までの情報において、この論文の行方を考えてみたい。

 情報社会の世論はマスコミとネットが連動してドラスティックに変化する。報道が肯定的であればネット上に多数の称賛が起こり、ひとたび報道が否定に転じるならば否定的な見解もまた集中的に提供される。

 報道が、肯定から否定に、あるいは否定から肯定に転じる契機は、ネット上の情報の動きに起因することももちろんある。その情報の取捨選択は、メディアフレームと呼ばれるマスメディアの価値判断の枠組みによる。その価値判断は、その情報に対して大衆が関心を寄せるかどうかが大きく関わる。今回のような世論の大きな変動は、個人が情報を発信できるようになったインターネット後の情報社会ではよく見られる現象である。

 さて、最近では多くの研究機関が、こうした情報社会の急激な世論の動きに対応するために、不手際が発生した際のマスコミ対応を含む危機管理マニュアル等を整備している。狙いの一つは、組織に対する非難の集中を避けることにある。主要な著者らが所属する研究機関も、こうした指針に沿って行動したものと思われる。情報社会に暮らす人々は、世論の動きに組織が迅速に対応することを求めがちである。

 ただ、今回の対応は、正確さと精緻さが求められる研究機関として、通常では考えられないほどに迅速だった。2014年3月13日付の「論文の疑義に対する調査委員会」(以下「調査委員会」とする)の「論文の疑義に関する調査中間報告書」(以下「中間報告書」とする)によれば、当該研究機関は、同年2月13日に疑義の連絡を受け、予備調査を4日間行った後、2月17日に調査を実施することを決定したとする※1。中間報告書は、その約1カ月後の3月13日に公表されている。