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 サンフランシスコのミッション地区が、いま本当に危ういことになっている。

 ミッション地区はサンフランシスコ市内の南部に位置し、以前からヒスパニック系住民の多いところだ。だが、近年、グーグルなどのテクノロジー企業の社員、それも若い社員が住み始めて、人気のヒップな地域とみなされるようになっている。

 そうしたお金のある住民が増えたので、おしゃれなレストランもたくさんできた。最近のサンフランシスコの注目レストラン、注目ショップなどは、ほとんどすべてと言っていいほど、この地域にあるほどだ。

 そして、地元の社会問題になっている「グーグルバス」も、ここから出発する。グーグルバスというのは、この地域に住むグーグル社員をシリコンバレーまで毎朝運ぶ巨大なバスのこと。朝は社員をグーグル本社へ送り届け、夕方は本社からまた自宅のあるミッション地区まで送るのだ。

 なお、グーグルだけでなく、フェイスブックやヤフーなどもバスを走らせている。

 グーグルバスは、ただでさえ混み合っているミッション地区の交通渋滞を悪化させているという側面もあり、サンフランシスコの格差問題の象徴ともなってきた。

 交通渋滞だけでなく、住宅問題も発生している。高給取りのグーグル社員の流入によって家賃が高騰し、昔から住んでいる住民が住みにくくなっているからだ。この住宅問題は、このコラムでも以前伝えたことがあるのだが(『高収益IT企業の通勤バスが狙われる? サンフランシスコで起きた「高級化反対集会」』)、解決の糸口は見いだせぬままだ。最近は、グーグルの法務部社員に対するデモという形でさらに大きな問題として顕在化した。

 その社員、ジャック・ハルプリン氏は最近、このミッション地区で一軒家を購入した。米国ではよくあることだが、この一軒家は、内部ではいくつもの住居スペースに区切られており、賃貸物件として何世帯もの家族が住んでいた。

 ところがハルプリン氏は、自分のものになったこの家から店子を追い出しにかかった。同氏がこの一軒家を買った目的は、再び大きな家に改築し直して自ら住むことか、あるいは高級マンションに建て替えてもっと高い家賃収入を得ることなのだろう。出て行った店子もいるようだが、転居を拒否している世帯もある。