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 日本でのサービス開始が遅れていたiTunes Matchがようやく、連休まっただ中の5月2日、ひっそりと始まった。ユーザーの手元の大量のiTunes ライブラリーをAppleのiCloudサーバーに保管し、いつでもどこでも聴けるようにするというサービス。万単位のコレクションのごく一部しか持ち出せなかった悩みがこれで一気に解決する。バンザ~~イ!! ところが、そこここに思わぬ伏兵が。Appleが連休中にサービスが始めたのにはそんな面倒な事態を見越してのことだったのかもしれない。

iTunes Matchとはどんなサービスか?

 iTunes Matchというサービス、ピンとこない人にザックリとご説明しておこう。

 iTunes MatchとはパソコンのiTunesにため込んだ音楽(音声)ライブラリーを全部(上限あり)、AppleのサービスサイトiCloudに転送し、iPhoneのようなモバイルデバイスからいつでもどこでも聞けるようにする、というサービスだ(図1)。

図1 日本でもようやくiTunes Matchが始まった。ため込んだ音楽ライブラリーをいつでもどこでも楽しめる。デジタル音楽配信に後ろ向きな事業者・権利者を説得して事業スタートさせるのは大変だったろう。
図1 日本でもようやくiTunes Matchが始まった。ため込んだ音楽ライブラリーをいつでもどこでも楽しめる。デジタル音楽配信に後ろ向きな事業者・権利者を説得して事業スタートさせるのは大変だったろう。
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 音楽好きの人はきっと何千、いや何万曲もiTunesライブラリーにため込んでいるはずだ。容量にすると何百ギガバイトになっている人も珍しくないだろう。そんな楽曲の中から、たとえば旅行中に聴こうと思う曲を選択してiPhoneやiPodに流し込むのは土台無理というものだ。移動中のドライブの間は景気のいいリズミカルな楽曲がほしいが、着いた先の静かな庭園の中ではしっとりとしたバラードが聴きたくなるかも知れないし、向こうの峰々に吸い込まれて行きそうなクラシック曲がぴったりなのかも知れない。その時の気分によって聴きたくなる曲はそれこそ千差万別。場合によっては友人や恋人の趣味に合わせた曲もかけたくなる。

 これまでは、せいぜい1000曲くらい厳選して持ち歩くものの、気分にぴったりの曲を入れてこなかったと、悔しい思いをすることもあるだろう。それが、iTunes Matchで一挙に解決するのだ。手持ちのライブラリーのうちiTunes Storeで購入した楽曲以外のものを2万5000曲までiCloudにアップロードして収めておくことができる。iTunes Storeで購入した楽曲は購入記録のみがiCloud内で管理されているから、アップロードの必要もなく、曲数制限もない。

 欧米では、他にも同種のクラウド音楽配信サービスがあるが、iTunes Matchの素晴らしいところはiTunes Store内で販売している楽曲に関してはファイルのアップロード操作なしにダウンロード&ストリーミング可能になるという点だ。過去にiTunes Storeで購入した楽曲は、すでにiCloud内で販売管理されているのでiTunes Matchのサービスインを待たずとも、モバイルデバイスでいつでもダウンロード可能な状態にあった。しかし、それ以上にiTunes Matchが太っ腹なのはユーザーが所有するCDから取込んだ楽曲でもiTunes Store内で販売されていることが確認されれば、iCloud内でAppleが販売用に用意した高品質版のコンテンツが利用可能になる点だ。

 つまり、以前にCDドライブを使ってビットレート128kbps程度で取込んだコンテンツであっても256kbpsの高品質版に置き換えられて鑑賞できるというわけだ。一旦、iCloudに上がったライブラリーはネットワークが完備している環境であればストリーミング再生される。環境としては3G回線でも十分。ネットワークがとても遅いという場合には楽曲がダウンロードされるのを待ってから聴けば良い。ネットにつなげられない環境に押し込められることが分かっている場合は、事前にダウンロードしておくことも可能だ。