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 昨年米国で2013年版のNexus 7と同時に発表されたChromecastが国内でも発売されました。テレビのコマーシャルも始まったので、ご存じのかたも多いかも知れません。

 ただ、Chromecastは、「わかりにくい」デバイスだと思います。というのは、スマートフォンやタブレットなどで利用しているコンテンツをテレビに表示する「だけ」のもののように見えるからです。

 スマートフォンやタブレットで、映画を見たり、ユーザー投稿動画、プロモーション映像を見るなんてことは、いまや普通です。そして多くのスマートフォンやタブレットは、テレビに接続して映像を表示する機能を持っています。また、PCにいたっては、最近のノートPCなどではテレビと同じくHDMIコネクタを持っているものがほとんどですし、テレビもPCを接続するためのRGBコネクタを持っているものが少なくありません。

 だから、スマートフォンなどのコンテンツがテレビでも視聴可能と言われて、そんな機器を買わずにHDMIケーブルとかMHL(モバイル・ハイデフニション・リンク、Mobile High-definition Link)なんかのアダプタを買えばいいじゃないか? あるいはMiracastのアダプタはどうなのよ? と多少でも昨今の事情に詳しい人なら疑問に思うでしょう。

 Chromecastとこれらの違いは、Chromecastが独立した機器になっていて、単独で動画などのコンテンツを受信して再生する機能があり、スマートフォンやタブレットは、その制御だけに使われるという点です。逆にいうとGUIを持たず、他の機器からの指示のみで動くコンピューターといってもいいでしょう。

 このため、インターネットにあるコンテンツの再生は、スマートフォンなどに負荷を掛けず、再生が始まってしまえば、スマートフォンの画面をオフにしたスタンバイ状態でもかまわないのです。この点が、スマートフォンからの直接出力やMiracastなどのリモートディスプレイとは違う点になります。スマートフォンをテレビに接続したり、リモートディスプレイを使う場合、画面そのものは、スマートフォン側で作られます。このため、スマートフォンを止めるわけにはいきません。

 もう1つ、Chromecastの特徴は、インターネット上の商業ストリーミングサービスなど、著作権管理機能があるサービスにも対応が可能という点です。一般に料金を払って動画などの配信を受ける場合、動画データは、勝手にコピーされないようにさまざまな著作権管理機能を使います。Chromecastは独立したコンピュータなので、これに対応できるわけです。実際、米国ではHuluやNetflexといった動画配信サービスに対応しています。

 何ができるようになるかは、実際にはアプリ次第です。ストリーミングサービスをChromecastが直接受信して再生させることもできるし、逆にスマートフォンで作った画像を送信して、これを再生させることもできます。Googleは、Chromecastを使って、テレビで何かを再生させることを「キャスト」といっています。キャストといっても、ディズニーランドのアルバイトのことではありません。英単語としては、「投げる」、「(映画などの)役をわりあてる」、「(金属を)鋳造する」などの意味があります。そういうわけで、Chromecastでテレビにコンテンツなどを表示させることを、この記事でも「キャストする」と言うことにしましょう。実際、「キャストする」みたいな適当な単語がないと、文章が面倒なものになってしまうのです。

 Chromecastは、アンドロイドのほかに、iOSやWindows、OS Xにも対応しています。ただし、WindowsとOS Xでは、Chromeブラウザーの中から使います。Chromeブラウザーに「Chromecast拡張」をインストールすると、表示しているタブを「キャストする」機能が追加されるほか、Chromecast対応のWebサイト(YouTube)などでは、動画再生枠の中にキャストアイコンが表示されるようになります。キャストアイコンは、アプリなどでChromecast機能を起動するための目印になるアイコンです。

Chromecast拡張を組み込んだChromeブラウザでYouTubeサイトを開くと動画のフレームにキャストアイコンが表示され、動画を直接テレビで再生するように指定できる。
Chromecast拡張を組み込んだChromeブラウザでYouTubeサイトを開くと動画のフレームにキャストアイコンが表示され、動画を直接テレビで再生するように指定できる。
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