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 以前も本コラムでお伝えした、米アマゾン・ドット・コムと出版社大手の米アシェット・ブック・グループとの対立(関連記事:“皆様のアマゾン”と出版社が再び対決、アマゾンは「文学の敵」という批判まで)。状況は依然として膠着状態だが、その中でそれぞれの側に加担する出版社や著者が分かれるなど、興味深い動きも起こっている。

 この対立は、取引条件でアシェットと合意できないとの理由から、アマゾンが同社の出版物の予約販売を取りやめたり、電子書籍のKindle版を見えなくしたり、値引率を低くしてしまっているというものだ。

 言うことを聞かないアシェットに対してアマゾンが嫌がらせをしているといった批判があるのに対して、アマゾンは「小売店ならばどこでも条件の合わない取引はしない。それに店内でどう商品をフィーチャーするかは小売店の勝手」と言って、そんな批判を退けてきた。

 ただ、そのアマゾンにも痛い批判が「文学界を台無しにしている」というものだった。アマゾンがアシェットの書籍を売れにくくすることで、迷惑を被っているのは著者らである。ただでさえ、十分な印税が入らず細々と生活している著者が多い中、アマゾンがその状況をさらに悪くして文学のエコシステムを壊そうとしているというのだ。

 そうではないとアピールするために、最初にアマゾンが提案したのは、交渉が成立するまでアシェットと共に著者のための財源を作ろうというものだった。この案はアシェットに拒否されて頓挫。その次にアマゾンが提案したのは、やはり合意に至るまでの間、電子書籍からの収入をまるごと著者に差し出そうというものだ。

 電子書籍の売り上げは、たいていアマゾンのような小売店が30%を取り、残りの70%を出版社が取る。出版社は、その取り分のさらに25%ほどを著者分として渡している。「まるごと」ということは、アマゾンもアシェットも自分の取り分を放棄して、すべてを著者に渡そうというわけだ。

 これに対し、アシェットは「そんなことをするのは自殺行為だ」といって再び退けた。アシェットの著者の一人であるドグラス・プレストン氏は、読者への手紙という形を取り、「一部の著者を狙い撃ちするのは正しくない」「本を人質にすべきではない」「まだ小さなスタートアップだった頃、われわれの本を売ることでアマゾンは生き延びた」といった批判を展開し、読者もアマゾンのジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)宛てにレターを書こうと呼びかけた。プレストン氏の手紙には、ステファン・キング氏ら数々の有名著者も名前を連ねている。