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 国境をまたにかけ、廃棄パソコンの行方を追う研究者がいる──そんな噂に、たくましい人物を想像して会いに行くと、ふんわりとした笑顔の小柄な女性が現れた。それが吉田綾氏である。

 吉田氏の研究テーマは、アジア地域における電子廃棄物のマテリアルフロー(物の流れ)分析。自然環境の悪化と資源の枯渇が深刻化する中、パソコンなどの廃棄物がどこに流れ、どう処分されるかは重要な問題になっている。

 「先日はフィリピンの廃棄物処分場に行ってきました。ゴミの山の中、ケーブルを燃やして金属を取り出す子供たちなど見ると、圧倒されましたね」。

 14~18歳の4年間を、発展目覚ましい中国で過ごした。環境問題や廃棄物処理に関心を持ったのは、そのころからだという。

 「この間まで何もなかったところにみるみる建物が立ちました。車もどんどん増える。このまま発展していくとどうなるんだろうと思ったんです。水や大気の汚染、廃棄物もちゃんと処理されているのか疑問でした」。

 そして、帰国後に進んだ大学、大学院ではゴミ問題、特に途上国の廃棄物処理やリサイクルの問題に取り組んだ。現在の研究もその延長線上にある。

 「研究の醍醐味(だいごみ)は、データと実体を結び付けて答えを出すことだと思います。例えば、廃棄物量やその流れはさまざまなデータを基に試算します。でもそれだけじゃ現状は分からない。そこに実際に見たり聞いたりして得た情報を組み入れて、現実解を導き出すんです」。

 こうしてまとめた吉田氏の研究結果は、環境庁の審議会などの場で生かされていく。「環境に関する国のビジョンを検討する上で、必要なデータを集めるのが国立環境研究所の役目です。その役目の中で自分の研究テーマを見つけ、研究によって社会に貢献していきたいと思っています」。