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 「電車運行維持のためにぬれ煎餅を買ってください!! 電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」。2006年11月、千葉県にある銚子電気鉄道(銚子電鉄)のWebサイトにこんな文章が踊った。車両の検査期限を目前にして、1000万円を超す点検費用がどうしても用意できない。鉄道は存続の危機にあった。

 同社は鉄道事業以外に、ぬれ煎餅などの物品販売を手がける。収益の3分の2以上は、その売り上げだ。これを伸ばせば、鉄道を救えるかもしれない。

 冒頭の文章をネットに載せたのは、一社員の思い付き。反響は期待していなかったが、巨大掲示板「2ちゃんねる」やニュースサイトで取り上げられて火が付いた。全国からの注文は2週間で1万件を超え、点検は無事実施された。

 市民らによる支援団体「銚子電鉄サポーターズ」が鉄道の運行を支えてきた。ボランティアの手で、駅の清掃が行われたことも。ブームの多くが一時で終わる中、ぬれ煎餅騒動は継続的な支援活動に発展した。

 陰の立て役者となったのは、やはりインターネットだ。特に大きな役割を果たしたのはブログ。向後氏は騒動の直後から、「ただ、ありがとうが言いたい一心で」、ブログ「銚子電鉄の日記帳」を毎日つづった。これが多くの人の共感を呼び、支援者の輪が出来上がった。

 とはいえ、地方鉄道を巡る状況は相変わらず厳しい。「鉄道を残すには、地域が元気になるしかない」と考える向後氏は今、銚子のまちづくりに取り組む。自身のブログ「向後功作の銚子散歩」で、銚子の魅力を発信。写真撮影会や、走行中の電車内での演劇上演などのイベントも企画する。「本当の意味での交流があれば、人は何度もその地に来てくれる」からだ。「銚子のような地域はほかにもある。こうした取り組みを、他の地方鉄道にも広げたい」。そう話す向後氏の目は、日本のまちづくりの未来を見据えている。