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 予言が力を持っていた古き時代。天災や飢饉(ききん)にあえぐ世で、巫女である母親が目の見えない娘の行く末を案じ、予言の力を娘に伝えるために腹を切る──。生と死、破滅と再生の物語を描いた映像作品「たらちね Tarachine」。170枚の「切り絵」をベースに、コンピューターを使って制作したアニメーションだ。

 その原画制作と監督を務めたのが切り絵作家、福井利佐さん。彼女の描く切り絵は独特だ。切り絵というのは線と線がつながっていて、その間を切り抜いていく。そのため、普通はシンプルな線が描かれる。ところが、福井さんの切り絵は線が多く、鉛筆などで描くデッサンに近い。「影と明るいところだけでなく、あいまいな部分を線で表現できるのではないか」、そう思って自分の線を見つけ出した。

 アニメーションの制作は「鉄コン筋クリート」「アニマトリックス」を手掛けたSTUDIO4℃。当初、STUDIO4℃が作った予告編を見た福井さんは、自分の持つイメージと違うことに思い悩んだという。本編の長さは約11分間だが、完成に至るまでには1年半も掛かった。

 切り絵に魅せられた理由を尋ねると「紙の素材としての力に引かれる。手で触って作業の進み具合いを確かめられるのが良い」と言う。「切り絵というのは切った線がつながっていなければならないという制約がある。その制約の中でいかにその線を自然に見せるか、そこが腕の見せどころです」とも。

 デジタル化については「可能性には期待しているけれど、アナログである切り絵の良さは絶対に残したい」。福井さんの一種独特の切り絵は、アーティスト中島美嘉さんのCDアルバムジャケット制作などをはじめ、さまざまな分野で広く注目を集めている。デジタルとアナログの融合。デジタル化が進む今だからこそ、切り絵作家としての感性が求められるのだろう。