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 それは関西学院大学 ファイターズにとって6年ぶりに味わう歓喜の瞬間だった。2007年度のアメリカンフットボール大学日本一を決める毎日甲子園ボウル。ファイターズは残り時間3秒で劇的な逆転勝利を収め、優勝を手にした。

 6年間の“冬の時代”に終止符を打つことができた勝因の一つがITの導入だ。一般にアメリカンフットボールでは、その戦術を練ることに途方もないほどの時間を割く。その時間は練習時間をはるかにしのぐほど。撮りためた試合の映像処理やその映像の検索作業に費やす時間を、ITの力で短縮することが、ゲームプランやミーティングの質の向上に直結することは明らかだった。ファイターズは、2004年に分析チームを組織し、2006年には独自の分析ソフト「FITERS(※)」を開発。改良を重ね、2007年には「FITERS2」の実用化に至った。

 4年生の岡野友樹氏率いる分析チームは、他大学同士の試合も含めてビデオを収集。FITERS2に、試合時間、ボールの場所、攻撃/守備陣形など選手の一挙手一投足を記録して動画と関連付ける。それにより、特定の条件で絞り込んだプレーを瞬時に検索・検証できる。練習には岡野氏自ら立ち会い、走り込む角度や相手をブロックするタイミングなどの一歩一歩を確かめ、分析から導いた仮説を確認。その練習の様子もマネージャーがつぶさに撮影する。

 瞬時に膨大なデータを可視化できることは、ときにもろ刃の剣となる。多種多様なデータを見せたことで逆に選手を混乱させてしまうこともあった。「大切なのは、本番でプレーに結び付けられるように選手に理解してもらうこと。どの情報を選び、どれから伝えるかといったことが重要だと学びました」。

 現在岡野氏は、9月に始まる最後の秋季リーグに向けて、分析作業に日夜励んでいる。「目指すは去年果たせなかった社会人王者を破っての日本一です」と静かな闘志を燃やす。

※ 「Football Integrated Technology for Evaluation and Research System」の略