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 「死ぬまで失業せえへん。毎日パソコン見るのが楽しい」──。そうニコニコ話す針木ツネコさん。御年86歳。針木さんが暮らす徳島県勝浦郡上勝町は、人口約2000人のうち半数が高齢者という典型的な過疎地。この小さな町に笑顔を取り戻し、「生きる力」を植え付けたのが横石氏だ。第3セクター「いろどり」の副社長である。いろどりは料理を彩る季節の葉「つまもの」を事業の中核に据える。ネットワーク化した194軒の契約農家に対して発注し、受注者は自ら収穫、パック詰めして出荷する。

 横石氏がいろどり事業にパソコンを活用しようと導入したのが99年。「コンビニのPOSと商品棚が上勝の段々畑に見えて、ひらめいた」のが導入のきっかけだ。おばあちゃんたちは、パソコンで売上金額やランキングを見て競争心をかき立てられ、市況を見て“ビジネス戦略”を考える。横石氏は、いろどりに参加する家庭の多くの接続環境になぞらえて、彼女らを「光ファイばーちゃん」と呼ぶ。それくらい「使う必然性があるから、しっかり使いこなしている」。現在、参加者の中には、月に100万円稼ぐ人もいるほど。上勝町の魅力に引かれ、I/Uターン者もぐっと増えた。

 ここに至るには数え切れない苦労もあった。開始当初、協力してくれたのはわずか4人。研究のため、朝は市場、夜はつまものが使われる料亭に、一人で通い続けた。料亭の調理場をのぞいてつまみ出されたことも数知れず。今の上勝町は文字通り横石氏の汗と涙の結晶だ。事業が波に乗ったタイミングで辞表を出したときには、撤回してほしいという嘆願書をもらった。「よそもんのお前に何が分かる!」と受け入れてもらえなかった赴任当初を考えると「うれしくて、涙が止まらなかった」。

 住民とのコミュニケーションには、今でも手書きのファクシミリを使う。「技術が進歩しても“心で伝える”部分は必要なんです」。