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立石 幸士(たていし たかし)
1972年、島根県生まれ。東京電機大学を卒業後、98年にキングジムに入社。電子文具事業開発本部・開発二課に配属され、ステッカーメーカー「ピタゴラス」などの開発に従事。2007年からデジタルメモ機「ポメラ」の企画開発に携わってきた。現在、開発本部電子文具開発部開発課のリーダーを務める
(撮影:村田 和聡)

 通信機能もなければ、電子辞書機能もない。できることと言えば、テキストの入力だけ。そんな“一芸”製品が売れている。発売したのは文具メーカーのキングジム。文庫サイズの本体に折り畳み式のキーボードを装備したユニークな製品だ。快適な入力に徹した明快なコンセプトが、まったく新しい市場を生み出した。

■発売直後から大変な人気ですね。都内の家電量販店でも、売り切れが続出しています。

 正直言って、反響の大きさに驚いています。一定の需要が見込めると思って製品化したわけですが、まさかここまで注目されるとは思ってもみませんでした。

 製品を発表したのは10月下旬でしたが、その直後から家電量販店や通信販売会社の注文が殺到し、11月10日の発売と同時に、1回目の生産分が瞬く間に“蒸発”しました。現在、大急ぎで第2次、第3次の生産に着手していますが、一体どこまで需要が膨らむのか、現時点ではまったく読めない状況です。

■それにしても、通信機能を持たない端末がこれほど注目されるのは不思議です。この製品が売れると思った根拠は何ですか。

 一言で言うと、私自身が欲しかったからです。

 私は開発部門に籍を置いているので、B5サイズのモバイルノートをいつも出先に持ち歩き、プレゼンテーションに使っています。取引先で図面を見せ、先方に企画の意図を説明したりするわけです。ただ、いつも自分がプレゼンの主役とは限りません。同僚がメーンで説明し、私は傍らで議事録を取るだけの場合もあります。むしろそちらの方が多いかもしれません。その議事録のために、わざわざ重いノートを持ち運ぶのがいつも苦痛だったのです。

 軽くなったと言っても、ノートは1キロ程度はあります。それに、バッテリー切れに備えてACアダプターも一緒に持ち運ばないといけない。鞄の中で一番かさばるのがノートなんです。

 そこで、思い付いたのが今回のデジタルメモ機です。大きさを文庫本サイズに抑え、単4電池で何十時間も駆動できるように設計する。快適な入力を確保するため、キーボードは開閉式にして十分なキーピッチを確保する。そんな製品を出せば、同じようなストレスを抱えているユーザーに必ず訴求できると考えたのです。