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 最近注目が集まっているネットサービスの一つに、オンラインストレージがある。ユーザーに対して、ネット上に用意したハードディスクを貸し出すサービスで、ユーザーはインターネット経由でデータを出し入れする。容量や内容によって、有料/無料のさまざまなサービスがある中、2008年5月にリコーが始めた「quanp(クオンプ)」は、洗練された画面や使い勝手の良さで話題となった。ネットブック(小型で安価なノート)の浸透や無線LANサービスの拡充で、モバイルユーザーが大幅に増えると予想される今年、オンラインストレージサービスも競争が激しくなり、淘汰が進むだろう。今回は、リコーの近藤史朗社長にquanpに懸ける思いや今後の戦略などを聞いた。

■quanpの開発経緯を教えてください。

 リコーというと、複写機をはじめとする企業向けビジネスのイメージが強いかもしれません。その当社が「quanp」という個人向けのサービスを始めたのは、リコーが大切にしてきたポリシーを、個人向けビジネスの世界でも実現したい、実現できると考えたからです。

 「大切なものを守り、きちんと残す」。これが当社のポリシーの一つです。このポリシーに沿って、ユーザーの“記憶”や“歴史”を大切に扱ってきました。我々がデジタル社会への移行を強力に推し進めてきたのも、きちんとした記録を残せるようにするためです。このデジタル化の恩恵を一般ユーザーにも知ってほしい。ストレージを活用すれば、企業か個人かに関係なく、歴史や記憶を長く安全に保つことができるようになるはずです。

 私自身の体験も影響しています。大切な写真が火事で焼失した知人に、学生時代の写真をスキャナーで取り込んで贈ったら、泣いて喜んでくれました。人間の体験や記憶は、そのくらい大事なんですね。子どもが小さかったころの写真やビデオ映像も、これからずっと残せるとは限りません。記録媒体や情報を個人で保有していると、紛失したり、機械が壊れて使えなくなったりするリスクがあります。私自身、散歩に必ず携帯するほどのカメラ好きです。写真がデジタル化された今こそ、きちっと残せる環境を整えておく必要があります。

■オンラインストレージに、とても深い「思い」を抱いていると聞きました。

 quanpのコンセプトは「file your life(あなたの人生をファイリングしよう)」です。ただし、quanpを単なるストレージサービス、いわゆる“カタマリ”だけのサービスにしたくはないですね。「つなぐ」ということを大切にしたい。ネットワークを駆使して、知識と知識を出会わせるための“回路”をどんどん作っていきたいのです。脳と同じですね。宇宙の中ですべての星がつながって連携する、そこから新しい知識が創造される、そんな動きが絶対に必要です。

 例えば、写真の便利さは、言葉で表現しづらいことが、ひと目で伝わるところにあると思います。ロープの複雑な結び方や手の込んだ料理を学ぶときなど、解説書を読んでも覚えられないことが、デジカメで撮った画像を見れば、すぐに分かったり、思い出せたりします。そういう情報を蓄積して、何度も再利用して、脳を訓練するのはすごいことです。そして、こうした情報を皆で共有するのは、もっとすごい。オンラインストレージを発展させれば、こうした「つながり」を実現でき、個人レベルの知識が、みんなで使えるようになるのです。

 つながりを実現するための技術を、自分たちの手に入れておかなければという強い思いがあります。ただし、研究レベルで試行するのは無意味です。生身のユーザーをどんどん巻き込み、相互にコミュニケーションしながら技術をつくっていかなければ、机上の空論のままで終わってしまいます。いつまでたっても育たない技術に資金を投入するのではなく、ユーザーが存在する現場で、自分たちのコアな技術を使って、「つなぐ」ことに力を注いでいきます。