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 ぱっと見ただけでは、それが人間ではないと気付かない。石黒浩氏が開発した、自身のそっくりロボット「ジェミノイド HI-1」。人間とロボットが向き合う中から、「人間とは何か」という本質の解を探し出す。

■ジェミノイドを開発した狙いは。

 ロボットと人とのかかわり方を調べることで、人間の持つ知能や感情、意識といったものの原理を知りたいと思いました。

 例えば人と人が向き合っている場合、相手がじっと見ていたら「にらんでいるのでは」と、時々目をそらすと「あ、この人、考えている」などと思うでしょう。実際は全然考えていなかったとしても。そうした振る舞いが積み重なって、人間らしさを生み出しています。

 同じことを、人と人ではなく人とロボットでやってみる。人間そっくりのアンドロイドが、人間と同様にじっと見たり、時々、目をそらしたりする。そうした振る舞いのいろいろをアンドロイドに入れていくと、あるときロボットがすごく人間らしく思えるかもしれない。そこで、「その人間らしく見えるロボットをどう作ったか」を考えることで、「人間とは何か」という本質に迫れると思います。

 こうした手法で、知能や感性、感情、意識といったものを、人間の社会性に基づいて説明したいのです。

■遠大なテーマですね。

 遠大だとは思っていません。むしろ、脳の完全な地図を作る方が遠大で難しいし、神経のネットワークを全部再現したとして、それで人間の知能が本当に分かるかは疑問です。

 ロボットを通して人間と向き合うという研究はまだ比較的少ないですが、脳科学や認知科学の新しい方法論として試す価値はあると思います。あるいは、そういう切り口でないと先に進まないところまできているのかもしれません。私は、こっちの方が近道だと思っています。

■今は研究段階ですが、アンドロイドは例えばどんな活躍の仕方が考えられるでしょうか。

 例えば俳優のアンドロイドなどは面白いと思います。俳優、特に亡くなられた俳優のアンドロイドを作って、博物館などに置く。それをファンが動かせるようにして、操ったり話したりできるようにする。乗り移ってもいいし、その乗り移られた俳優と話すのも面白いでしょう。

 その操作は、おそらく俳優本人よりファンの方が上手でしょう。私のジェミノイドを作ったときもそうだったのですが、人は意外に自分の癖を知らないものです。むしろ学生の方が私の癖をよく知っている。同様に、ファンが操作した方が、本人が操作するよりも本人らしいかもしれません。

 そうした試みをやっていくことで、人間に対する哲学的な見本をみんなで共有できるような気がします。