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 「便利になった」──。私たちがパソコンやインターネットに抱く感想のほとんどはこうではないだろうか。しかし、世界を見渡すとその価値はこれだけにとどまらない。「生きるための道具」「生活を変える就労手段」、時に「長年にわたる民族紛争の解決の糸口」にもなる。その可能性は我々の想像以上のようだ。

■現在、開発途上国でのパソコンやネットの利用状況を教えてください。

内藤:統計上の数値では、少し古いデータになりますけど、2006年の日本のパソコンの普及率は7割近く。一方、最後の未開大陸と言われるアフリカはほとんどの国で数パーセント。インターネットに関しても、日本が7割近い一方で、アフリカは1%にも満たない数値の国がほとんど。

 ただ、統計上はそう出ていても、僕たちが現地で感じる「体感普及度合い」みたいなものは異なります。パソコンがあっても使われていないとか、学校によって設置率がまちまちだとか。そんな感覚を僕らは地域、地域で持っているわけです。

井出:その例で言えば、体感としては各国、ITに相当力を入れているという感覚はありますね。例えば、モンゴル。遊牧民の親でも子どもにはコンピューターの勉強をさせたいと考えています。世の中の情報を知るための窓口だという考え方をするんですね。そのために近くの学校にコンピューターがないと、わざわざ遠い学校に行かせたりするんですよ。

 アフリカの南部のルワンダも力を入れてます。国中に光ファイバーを引いて、IT立国になろう、と。そのための人材育成に余念がありません。

 普及度合いはまだ低いかもしれませんが、進展度合いとしては先進国よりも早いような気がしますね。

■パソコンやネットは途上国の何を変えたのでしょうか。

内藤:一つは国の経済発展や国の競争力という面で、世界市場に入っていけるチャンスを生み出したことでしょうね。JICAがフィリピンに作った、プログラミングなどを教える専門学校が良い例です。この学校の卒業生に日系企業からアプローチがばんばん来るのです。それまでは就職もできなかったような人が、いきなり月2000米ドルの給料をもらえるようになる。こういったことを増やしていけばそれが産業になり、経済発展につながりますよね。

井出:情報伝達の手段としても、当然その恩恵は大きいです。例えば、ウガンダのジャングルでピーナッツ農家を営んでいた人がいたんです。どうも今まで来ている仲買人の買い取り価格が安いんじゃないかと思ってネットで調べた。そしたら、もっと高く買ってくれる仲買人に出会えた。さらに調べると、ピーナッツをピーナッツバターにした方が高く売れる、と分かった。作り方をネットで調べてピーナッツバターを売るようになった。それで収入が全く違ってくるわけですから。医療や教育の面でも同じような成果が出ています。情報を得ることは、彼らの命にかかわるくらい大切なことなんです。

■今後の課題は何でしょう。

井出:まずは情報倫理の部分。知らないうちにネット上で何らかの被害者や加害者になったりすることを防がなくてはいけません。技術やハードの部分だけでなく、それに合わせた周辺環境作りですね。基本的なルール作りとか、それを浸透させるための教育は今後の大きな課題になってくると思います。

内藤:これはどこの国も同じかもしれませんが、やはりIT化が進むとデジタルデバイドも進みます。貧しい者はさらに貧しくなっていく。そういう中で、いかに「下を拾っていくか」を考えなくてはいけません。上を伸ばしていくのももちろん大切ですが、下を拾っていくモデルも作っていかないといけませんね。