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 電子カルテや遠隔医療など、ITを駆使して医療現場を支える構想は古くからある。ただ、実際に電子カルテを見たことのある人はどれくらいいるだろうか。自身で診療に電子カルテを使う保団連理事の本田氏さえ、ITを駆使した医療現場を実現する道のりは、まだ険しいと話す。

■パソコンやネットワークが貢献してきたものは何でしょうか。

 医療と電子カルテというと分かりやすいのですが、実は遅々として進んでいないですね。普及率は10%くらいではないでしょうか。随分前からはやっている「1患者1カルテ」もまだ構想段階にとどまっていますね。文字通りですが、1人の患者さんには1つしかカルテはなくて、それを各病院で共有しましょう、ということです。10年ほど前から言われているし、構想としてはもちろん素晴らしいのですが。

 いろいろな理由はあるのですが、一番はやはりそれを使うお医者さんでしょうね。電子カルテを使っても命を救えるわけではなく、一方でそれに対する手間やコストはそれなりにかかる。使おうと思っても、医療業界全体で1つのフォーマットが決まっているわけではないので、結局情報を共有するという一番の目的さえ果たせない。

 遠隔医療もそう。救急車から患者さんの情報をネットワークで送信したり、離島に住んでいる人が本島と同じ医療を受けられたり、と。確かに便利です。ただ、それ以前にお医者さんの数を増やしたり、病院の受け入れ体制を変えたりということが必要なんですよね。優先順位やコスト、ニーズ、それらを加味すると、医療現場でのIT利用にはまだいくつものハードルがあると思います。

 診療報酬明細書※1をすべて電子化してオンラインで提出することが2011年度から義務化されるのですが、いまだにその普及率は20%程度だと思います。

■医療とITはあまり相性が良くないのでしょうか。

 そんなことはないと思いますよ。実際、医療機器に関するコンピューター技術は科学の最先端です。CTスキャンで心臓の血管まで見えるようになったのもコンピューター技術のおかげです。この分野では非常に多くのコンピューターが使われています。医療機器は治療に直結するんですよね。だから発達する。

 若い世代が育ってくれば、電子カルテも含めて、パソコンの利用率も上がると思います。診療内容をパソコンで電子カルテに記したり、診療報酬明細書をオンラインで提出したりすることも抵抗なくできるようになると思います。携帯電話と同じですね。抵抗のない若い人から使っていって、普及につながる。そういう未来を期待したいですね。

※1 医療機関が、医療保険で賄われている費用を保険者に請求する際の明細書。レセプトとも呼ぶ