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 入院をしたことがある人なら思い当たるかもしれない。これから何が自分の身に起こるのか十分理解できない不安感──。出産、小児医療、思春期といった「子どもの育ち」を扱う国立成育医療センターでは、全病室のベッドサイドに液晶ディスプレイが備え付けられている。これは患者にとって、自分の病気や自分がいる病院についての情報を自発的に入手するための「窓」の役割を果たす存在だ。

 患者はこの端末で、治療計画や一般的な医療情報、病院内の設備、食事メニューなどを調べられる。看護師や医師も手ぶらで患者の元を訪れ、この端末を通して処方する薬や治療方法を確認する。

 「患者は、看護師たちがどういう手順で薬を処方するかをビデオで『予習』している。だから看護師たちも手順をおろそかにしない。情報をオープンにすることが重要なんです」。

 同センターで、医療情報室長を務める山野辺裕二氏はこう語る。山野辺氏はれっきとした医師でもあるが、現在は、情報システム部門専従の立場。現場での経験を情報システムへ還元する役割を求められている。

 山野辺氏の研究の一部を紹介しよう。例えば、電子カルテで使用するフォントはプロポーショナルが望ましいか否か。答えは否だ。プロポーショナルフォントでは、字間が自動的に詰まるため、薬の処方量を示す小数点を見誤る恐れがある。「こんなことすらきちんと研究されていなかった」というのが、山野辺氏の実感だ。

 「成育医療センターは非常に恵まれている病院だ。ITの重要性は認識されていてもお金をかけられない病院も多い。メーカーは、病院の資金力に応じた選択肢を用意してほしい」(山野辺氏)。事故を防ぎ、質の高い医療を実現するために、ITが対応すべき課題はまだ多い。