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 文化財を高精細なコンピューターグラフィックス(CG)で再現し、自由な角度から鑑賞したり、近付いて細部まで確認できたりする。凸版印刷が開発したVR(バーチャルリアリティ)技術は、文化財の新しい鑑賞方法を提示した。

 例えば、バチカン市国にあるシスティーナ礼拝堂。天井にはミケランジェロの傑作「最後の審判」が描かれている。VR技術を使えば、地上から離れた天井画のすぐそばまで近寄れる。あたかも、はしごに座って筆を入れ続けたミケランジェロになった気分が味わえる。

 VR技術の開発に携わった三枝太氏に開発の経緯を聞くと、「印刷の分野ではDTPに代表されるように、アナログからデジタル化への移行が早かった。文化財については、さらに自由に動かせるというインタラクティブ性を持たせたいと考えた」という。

 VR技術には、印刷会社ならではのノウハウが生きている。「国宝の阿修羅像を再現する際には、3900万画素のデジカメであらゆる角度から撮影。合計 300枚の写真を三次元スキャナーで計測した3Dモデルに貼り付ける作業は、大容量のデータを扱ってきた印刷会社の得意分野。普段から正確な色の再現を求められてきた点も役立った」。

 作成したVRコンテンツは、大型スクリーンで表示する。「開発当時はスーパーコンピューターが必要だったが、現在は高性能サーバーなどPC環境で再生できるようになった」。

 最新の研究成果を駆使して消失した文化財を復元することも可能だ。「江戸城の本丸御殿と天守を再現した際は、VR技術を使うことで逆に学者側に新発見が生まれた」。

 旅行会社などでは、既にVR技術を使った事業展開が進んでいる。「将来的にはネット上での配信も検討している」。自宅にいながら人類の遺産に触れられる時代は、もう目の前まで来ているようだ。