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 新しいテレビの見方が広まりつつある。もはや、好きな番組を見るために予定を切り上げて帰宅したり、録画したりする必要はない。ブロードバンドの普及によって登場したオンデマンド配信サービスを利用すれば、好きな番組を好きな時間に見ることができるようになるのだ。米国では、すでに無料の「インターネットテレビ」が市民権を得ているという。日本でも昨年12月1日、日本放送協会(NHK)の「NHKオンデマンド」が始まった。今回は、NHKオンデマンド室の木田実室長に、現状や今後の展開について聞いた。

■サービスの内容を教えてください。

 NHKオンデマンドとは、NHKが過去に放送した番組を、ブロードバンド回線などを通じて再配信するサービスです。見たい番組をユーザーが選択して視聴します。VOD(ビデオ・オン・デマンド)と呼ばれる種類のサービスです。

 利用方法は大きく2つあります。一つは、ネットに接続したパソコンを使う方法です。ビットレート(速度)が1.5Mbpsの高画質な映像と、それより低画質の768Kbpsの2種類の映像を用意しています。イー・モバイルのデータカードなどを使えば、外出先でも視聴できます。

 もう一つは、テレビで視聴する方法です。「J:COM」「アクトビラ」「ひかりTV」と別途契約する必要があります。

 コンテンツとしては、連続テレビ小説やドキュメンタリーなど注目度の高い人気番組を中心に、前日放送した番組をデイリーで十数本配信しています。これを「見逃し番組」と呼んでいます。ほかに、名作ドラマやドキュメンタリー番組などの「特選ライブラリー」もあります。

 NHKオンデマンドは、非営利で運営しているサービスです。ただ、従来のNHKの受信料とは別会計で運営しなくてはなりません。「NHKオンデマンドは無料にすべき」という意見が寄せられますが、運営にはどうしてもオンデマンド利用料が別途必要です。価格は番組の単品販売で上限315円、見逃し番組とニュース番組を視聴できる「見逃し見放題パック」が月額1470円です。我々としては、低価格を実現できたと考えています。今後利用者が増え、初期投資を解消できれば、料金を下げることも可能です。

■どのような世界を目指したのですか。

 テレビはこれまで「待って見るもの」でした。これが放送法の改正で、通信回線を使って番組を有料で提供できるようになりました。これを機に、我々はテレビから「時間の制約」を取り払おうと考えました。リアルタイムに見るスタイルから、アトランダムに、エニータイムに見られるように変えたのです。オンデマンド配信が時間的な制約を取り払うと、さまざまな番組を「昔、白黒テレビで、家族みんなで茶の間で見たなあ」などと懐かしんでもらえるようになります。これによって、NHKに対する親近感が高まるはず──これが本事業の核心です。

 当然のことながら、番組の制作者はできるだけ多くの人に見てもらいたいと思って番組を作っています。しかし放送だと、見る側は決まった時間にテレビの前に座るなり、録画するなりしないと見られません。オンデマンドサービスなら、手持ちのパソコンがある日突然テレビになり、ダイレクトに見られるようになります。録画が不要になるのです。

 NHKオンデマンドで配信できる内容は、放送法の制約で、過去に放送した番組に限られます。オンデマンド用に新たなコンテンツを作ることはできません。しかし、NHK総合、教育、BSハイビジョン、BS1、BS2の5波の番組の中には、最近作ったのか、昔作ったのかにかかわらず、多くの皆さんに見てもらいたいコンテンツがたくさんあります。30%の視聴率をたたき出した人気の番組であっても、残りの70%の人はそれを見ていません。NHKオンデマンドによって時間の制約を取り払うことができれば、残り70%の人にもコンテンツを楽しんでもらえるようになるのではと考えています。

 一方で、我々の番組が無料の動画サイトへ違法に投稿され、見ている人も罪悪感なしに見ている、という状況もなくしたいと思っていました。200~300円を払えば、きれいな映像を、罪悪感を抱くことなく見られるのです。