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 ごく平凡な小学生たちが、小学校最後の夏休みを舞台に繰り広げる“ちょっと不思議な”物語「電脳コイル」。人物も風景も、どれを取ってもごく普通の日常を“不思議”にさせているのが、子供たちがかける「電脳メガネ」だ。電脳メガネを通して見える世界では、電脳ペットが走り回り、空中にデータが浮かび上がる。携帯電話もいつでも使える。

 「メガネをかけるだけで、例えば、普段はひ弱な主人公が、もう一つの世界に入り込んで人を助けたり、目の前の日本とは、別の日本を見ることができたり……。そんな世界を描けないかな、と思ったのです」と話すのは、本作品の原作・脚本・監督を手がけた磯光雄氏。

 磯氏は作品の中で、「現実とは何か」を見ている者に何度も突き付ける。主役を子供にしたのも、「子供は現実かそうでないかを見極めていく過程にいる存在。目の前で起きていることが本当のことなのか、みんなが認識していることなのか、そういうことがごちゃごちゃになっている」からだ。登場人物の少女が「触れられるものだけを信じるべきか」と自身に問うシーンや、別の少女が「メガネに殺されるぞ」と警告するシーンはその象徴だ。まるで、インターネットの世界に飲み込まれていく、現代の我々への警告のようにも思える。大人になるにつれて、周囲に適合し、捨てていく“あいまいさ”を子供は持っている。「個人の主観が介在しない現実なんてあり得ない。主観と、目に見えるものの“はざま”にある不完全なほころびに向かい合い、楽しむ存在として、子供は適役だった」。

 アニメは2次元の世界。3次元の現実とは異なり、そもそも実在していない。「それなのに、登場人物の表情から気持ちを読み取ったり、アニメの世界にいるような気分になったり──。“うそ”の世界から“実在”を感じている。だから、アニメは面白いんです。」