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 「コンピューターは機器の陳腐化が急速で、歴史的価値が生じる前に消えてしまう恐れがある──」。こう危惧するのは、情報処理学会で歴史特別委員会の委員長を務める発田 弘氏。

 例えば、30代や40代のパソコンユーザーであれば一度は目にしたであろう、NECの「PC-9801」。PC-9801の価値について、「国内で広く普及した点もさることながら、当時の欧米のパソコンと比べて仕様が先進的だった」と評価する。しかしながら、このようなパソコンは「中途半端に古いものはあまり評価しない国民性があり、良い状態で保管されることは少ない」。

 そこで、歴史特別委員会は発田氏らが中心となり、2009年2月から、こうした過去に実績のあるコンピューターに対し、「情報処理技術遺産」と認定する制度を始めた。遺産と認定することで、コンピューターの歴史的価値を世間に認識してもらおうという趣旨だ。制度開始前はそれほど世間の関心を引くとは思わなかった。だが、いざ認定制度が始まると、古いパソコンの所有者から問い合わせが何度か寄せられた。

 もともと歴史特別委員会は、約25年前にコンピューターの歴史を編さんするのを目的として学会内で発足した。その後、コンピューターの歴史や資料を「コンピュータ博物館」として学会が運用するWebサイトに公開しているが、各方面から「ぜひ実物のコンピューター専門の博物館を」という声が上がった。専門博物館の意義を「過去の計算機は外観から仕組みを把握しやすいので、展示すれば最適な教材となる」と力強く説明する。

 残念ながら、予算不足などにより、博物館設立に向けての具体的な動きはまだない。その一方で、「コンピューターの専門博物館はぜひ実現したい夢。そのためには、現存する歴史的な遺産を本制度で可能な限り守っていきたい」と、発田氏はあくまで前向きだ。