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 「きもの人」は、数十万から数百万円という高級着物を扱うオンラインショップだ。衰退する呉服業界の中で順調に売り上げを伸ばし、2008年度の年商は 1億円を超える。Webサイトを運営するのは伊藤康子氏。23年間OLとして働いた後、45歳で起業した。呉服業界に通じていたわけでも、インターネットに詳しかったわけでもない。着物が好きというだけで、全くのゼロからスタートした異色の経営者だ。

 成功の秘訣を伊藤氏は、「ニッチな商材を選んだこと」と語る。きもの人が扱うのは、通常の呉服店やオンラインショップでは出会えないような、稀少品ばかり。「多少高価でも、ほかの店では手に入らない素敵な商品を提供することで、『探していたものがここにある』と思わせるような差別化ができた」。

 ただ、いくら質の高い着物でも、数百万円もする商品をネットで買うのは勇気がいるだろう。この心理的な障壁を下げるために、伊藤氏は「顔が見える」ショップ作りを徹底した。サイトの看板の一つが「女将の日記」。伊藤氏のブログで、仕入れの様子や入荷した商品の説明などが、着物に対する熱い思いとともに語られている。また「女将奮闘記」には、起業の経緯を失敗談も交えて紹介。自分をさらけ出すことで顧客との距離を縮め、安心感を与える。

 さらに伊藤氏が心がけるのは、「単に着物を売るだけでなく、着物の楽しさ、着物のある生活をトータルで提案すること」。例えば歌舞伎を鑑賞したり、着物の産地を訪問したりするツアーを独自に企画。普段は着物を着ることが少ない顧客に対し、着物に親しむ機会を提供する。そんなイベントなどを通じて、オンラインショップでありながら、伊藤氏は顧客の9割と実際に対面し、交流を深めているという。

 「東京にオリンピックが来るときは、着物文化を世界に発信したい」──。伊藤氏の次なる目標だ。