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 ビジネスにおいて、パソコンやインターネットを活用するのは当たり前のこと。今の子どもたちが成長し、社会に出たら、こういったスキルは当然のように求められるはずだ。しかし学校において、教育の情報化は一向に進んでいない。相変わらず、「黒板+手書き」の授業が中心だ。

 こうした状況の中、政府は教育の情報化を推進するために、2009年度、4000億円規模の大型の補正予算を組んだ。また、情報教育の推進をより明確にした新しい学習指導要領の一部先行実施が今春始まった。日本の未来を担う子どもたちは今後、教室でどのような教育を受けるようになるのだろうか。今回は、教育の情報化に詳しく、文部科学省の各種検討会にも参加している尚美学園大学の小泉力一教授に話を聞いた。

■新しい学習指導要領で推進する「教育の情報化」とは。

 「教育の情報化」には、次の3点が含まれています。一つは、子どもたちが幸せになるために、分かる授業を実践すること。二つ目は、子どもたちが社会に出たときに役立つ「情報活用能力」を高めること。最後は、先生の校務の軽減に役立てること。これを果たせれば、先生が子どもたちと接する時間を増やせます。

 新しい学習指導要領や先生が使用する「教育の情報化に関する手引」では、教育の情報化にかかわる部分で、2つの変化が見られます。一つは、すべての教科において、子どもたちの情報活用能力を育てる取り組みをすべき、としたことです。例えば、小学校ではデジタルコンテンツを操作できる「電子黒板」を導入し、動く教材を使って授業をテンポよく進めることが考えられています。大事なのは、子どもたちが机に落としていた目線を黒板に上げることと、黒板上の情報を共有すること。また、先生の手元の細かな作業を電子黒板に大きく映せば、子どもたちは実験などを間違わずに進めることができ、理解も深まるはずです。

 もう一つは、先生が便利な情報機器を活用した授業を行うように努力してほしい、としたことです。例えば、表計算ソフトを使って理科の実験結果を分析したり、グラフを使ったビジュアルな文書としてまとめたりします。文書をワープロで入力し、そこにデジタルカメラで撮った写真を貼り付ければ、表現力はグンとアップします。こういった例は、挙げればキリがありません。

■大規模な補正予算が組まれた背景と期待される効果を教えてください。

 学校の情報化に対する国の予算は、これまで地方交付税として分配されていました。このため、自治体の事情によっては学校の情報化よりも優先度が高い別の項目に使われる場合がありました。その結果、情報化が進んだ自治体と、そうでない自治体が生じました。意外に思うかもしれませんが、大都市圏でも、教育の情報化は遅れていたのです。

 国は、2010年度というゴールを定めています。その内容は、3.6人の子どもに1台のパソコンを割り当てたり、インターネット接続が100%可能な環境や校内LANを整備したり、普通教室に2台のパソコンが行き渡るようにしたり、といったことです。今回の補正予算は、こうした目標を達成するための前例のないチャンスです。すべての自治体にとって、重要なスタートラインなのです。

 補正予算の影響もあり、各自治体が近隣の自治体の状況を意識し始めています。子どもたちにとって、これは良い傾向です。教育の情報化は、モノだけそろえればいいわけではありません。先生のスキルや、やる気がとても重要です。ですから、国は今回の補正予算でハード面を整備した後、人的な部分やソフトウエアの整備へと軸足を移すべきです。先生に対する研修も、最近は授業に根付いた課題解決型の内容へと変化しています。どんな教材を使うべきなのか、授業ではどんな内容をどう組み立てるか、といったことを先生も学ぶのです。先生は、新しい機器をいきなり授業で使うことには慎重です。教室や授業は、先生の「舞台」です。どうしても、「失敗してはいけない」と考えてしまいます。効果のある研修を続けていかなければなりません。