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 2009年9月1日、Windows 7ならびにWindows Server 2008 R2のボリュームライセンス提供が始まった。本誌が2009年4月から5月にかけて実施した「企業の情報化実態に関する調査」では、企業の91.3%がいまだにWindows XPを中心OSとして利用していて、Vistaへの移行はあまり進んでいない。昨年後半の経済危機以降、IT投資の意欲も低下している。こうした状況下で発売される新OSは、企業にとってどのようなメリットがあるのか? 新OSへの移行は進むのか? 米マイクロソフトで企業向けマーケティングを指揮するリチャード・レイノルズ氏と佐分利ユージン氏に話を聞いた。

■企業にとって、Windows 7やWindows Server 2008 R2を導入するメリットは何か?

レイノルズ氏:米フォレスター・リサーチは2009年7月、ITに関する決定権を持つ上級管理職を対象に調査を行った。回答を得たのは全世界の318社(うち3分の1は日本)。すると、彼らの87%がコストの管理、86%がセキュリティ対策、84%がエンドユーザーの生産性を、最優先課題として挙げたという。これは、我々がWindows 7に関して企業向けに投資を行ってきた分野と一致する。

 この調査で興味深いのは、62%以上の社員が本社の外で作業をしていて、こうした企業は平均して174の支店を抱えているということだ。そのようにさまざまな場所で働くモバイルワーカーが増えたことで、IT管理者にとっては、ユーザーの管理方法や関連コストの上昇が課題となっている。これを解決するソリューションを、Windows 7とWindows Server 2008 R2で提供する。

佐分利氏:具体的には、両者の連携で実現する「DirectAccess」という機能がある。社外にいるモバイルワーカーが社内にあるデータにアクセスする場合、DirectAccessを使えば、通常のブロードバンド回線を通して、ファイアウオールを超えても社内のリソースにアクセスできる。しかも、セキュアでシームレスな形で。IT管理者から見ても、ファイアウオールの外にあるパソコンがシームレスに管理できるという利点がある。

 従来はVPN(Virtual Private Network )などの技術を使う必要があったが、その場合、うまくアクセスできなかったり、接続できても不安定な環境であったりした。場合によっては専用回線まで用意して、高コストなソリューションを利用していた。これではせっかくいろいろな技術を導入しているのに、モバイルワーカーにとっては非常に不便だ。

 今回、クライアントとサーバーが同時にリリースされる点もポイントだ。これはWindows 2000以来のこと。クライアントとサーバーを一緒に利用することで生じる独特のメリットというものがある。

■実際にコスト削減は見込めるのか?

レイノルズ氏:Windows 7の導入前と導入後で、具体的にどれほどコストが下がるかをテストした事例がある。イギリスの金融機関ベーカーティリー、米国のマイアミ市、オランダを拠点とするITサービス企業ジェトロニクスの例だ。

 ベーカーティリーでは、パソコンの管理コストを18%削減できたという結果が出ていて、既に7月には全社的なWindows 7の展開に着手した。マイアミ市の場合は、パソコンの管理におけるコスト削減に加えて、電力管理の面でパソコン1台当たり年間54ドルの節約ができたという。同市では、電力管理の部分だけを考えても、Windows 7の導入を進める価値があると考えている。さらにジェトロニクスでは、パソコン1台当たり年間107ドルの管理費節約を実現した。そしてWindows 7の展開にかかる時間も、ほかのOSより60%短くて済み、それまで3時間かかっていた展開が1時間以内でできたという。

佐分利氏:Windows Server 2008 R2の代表的なコスト削減の機能としては、当然「仮想化」というものがあるが、Windows 7との組み合わせという意味では2つある。一つは先ほど紹介したDirectAccess、もう一つは「BranchCash」だ。BranchCashは、遠距離に大きなファイルを転送するときに有効な機能で、支社にいる社員が本社のサーバーからファイルをダウンロードするとき、支店のサーバーにデータを蓄積(キャッシング)しておいて、同じ支社の別の社員がファイルをダウンロードするときは、このキャッシュからデータを取得するという技術。これにより、同じファイルについてはわざわざ本社からネットワークをたどってダウンロードしなくても、支社にあるローカルのキャッシュでシームレスに共有できる。結果として、転送速度は上がるし、ネットワークコストも削減できる。

 実例を挙げると、台湾にあるスポートン・インターナショナルという電子製造業の企業では、Windows 7とWindows Server 2008 R2によるDirectAccessを導入することによって、年間3万ドルかかっていたVPNの専用回線が不要になった。さらに、営業マンの仕事の効率が上がり、9割以上の時間削減を実現したケースすらある。こうした生産性の向上によって売り上げが5%は増加したというデータもある。

■企業ではVistaの導入率が低く、いまだにWindows XPが主流となっているが、Vistaに比べ、Windows 7への移行はスムーズに進むのか?

レイノルズ氏:冒頭で紹介した米フォレスター・リサーチの調査では、57%以上の企業が今後1年から1年半の間にWindows 7を導入する意志があると答えた。もちろん、これは導入を開始するという意味で、全社的な展開まではさらに1年から1年半かかることになるだろう。例えばBMWは、10万台の対象パソコンのうち1万台を最初の1年から1年半でWindows 7に置き換え、次の段階でさらに50%に拡大する、といったアプローチをとる。

 Vistaと比較する具体的な数値はないが、企業の担当者に話を聞くと、Vistaのときとは雲泥の差だというコメントが返ってきた。というのも、Windows 7については、エンドユーザーの側から「導入してほしい」という要望が強いという。これはVistaのときは見られなかったことだ。

 また、今回事例として紹介したような早期導入プログラムは、通常はこちらからお願いし、説得して参加していただく形になる。しかし、Windows 7に関しては、逆にお客様の方から参加希望があり、実施していただいている。このような違いが生じているのも、エンドユーザー側の期待感があるということと、IT管理者側がコストやセキュリティ面での価値を認めてくれているためだ。

■Windows XPやVistaとの互換性に問題ないのか?

レイノルズ氏:Windows 7の場合は、アーキテクチャの部分はVistaと同じなので、企業が既にVista上でアプリケーションが動くかどうかテストしていれば、Windows 7でも問題なく動くだろう。ソフトウエアベンダーでも、Vistaの発売から約3年の間に、自社のアプリケーションのVista対応を進めているはず。そうしたアプリケーションも当然、Windows 7で問題なく動く。

 お客様が思っているほど、互換性の問題は大きくない。現在お客様が使っているアプリケーションの60~70%は、若干の調整を行えばWindows 7上で動くだろう。そして10~15%のアプリケーションは、いずれにしても寿命ということで終了するものが出てくる。残りの10~15%の基幹業務系については、いくらかの作業が必要となるかもしれない。

 Windows XP用のアプリケーションをWindows 7で動かすための仮想化機能もある。「Microsoft Desktop Optimization Pack(MDOP)」に含まれる「Microsoft Enterprise Desktop Virtualization(MED-V)」がそれに当たり、Windows XPの仮想環境をWindows 7上に構築し、そこでアプリケーションを動かすというソリューションだ。中堅中小企業向けには、同様の仮想化機能である「Windows XPモード」を用意する。

■Windows 7でも、Windows XPにダウングレードした形でのパソコンの出荷を認める方針だ。そのようにWindows XPという選択肢を残すこと自体が、新OSへの移行を遅らせる原因とならないか?

レイノルズ氏:常にお客様を第一に考えている。Windows 7の開発においてもお客様の意見に注意深く耳を傾けてきた。お客様にとっては、Windows 7に移行を進めていくと同時に、現在受けている恩恵を引き続き享受できなければならない。この厳しい経済状況だからこそ、我々も慎重に行動している。

 我々は、Windows 7への移行を強制するわけではなく、移行のお手伝いをしたいのだ。移行のタイミングというものは、お客様によってそれぞれ異なる。お客様の時間軸に沿った形で移行してもらえればよい。その際に、XPを走らせる環境が必要なら、そのためのツールを提供しなければならないし、XPへのダウングレードを望むのであれば、これも付けなければならない。

 ただ、移行のスピードは、これまでに比べても速くなると見ている。先ほど触れたMED-VやWindows XPモードは、あくまで移行を支援する要素にすぎず、永遠に使い続けるべき環境ではない。お客様の使っている古いアプリケーションが動く環境を提供することは必要だが、それと同時に、Windows 7の価値を享受していただきたいと考えている。