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 手渡した車と海の写真を見ながら、マスキングしたパソコンの天板に絵を描く岩崎氏。模写するのに、トレーシングペーパーなどのコピーツールは使わない。頼りになるのは自分の「目」と「腕」だけだ。

 これまで手掛けた作品数は、軽く1000を超える。“キャンバス”となる対象物は、オートバイのガソリンタンク、ヘルメット、車のボディーなど、人目に付く物が多いという。意外だったのは、パソコンへのペイント依頼が過去1回しかなかったこと。店舗のシャッターやマンションの壁一面など、大型作品も請け負う。

 描く題材は、顧客が決める。何でも描けるが、人物や動物などの表情豊かな題材を得意とする。アトリエのアートボードに描かれた犬は、今にもじゃれついてきそうだ。

 出来上がった作品を初めて見た顧客は、一様に「本物ソックリ」「写真みたい」と感嘆の声を漏らす。だが、感想を聞いた岩崎氏は「まだまだ修行が足りない」と自分を戒める。「写真と寸分違わず同じものにしたいなら、パソコンとプリンターでシールを印刷すればいい」というのが彼の持論だ。「絵を見た顧客から“生きているみたい”と言われたときが一番うれしかった。魂を吹き込むことができたかな」と笑う。

 岩崎氏は19歳のとき、エアーブラシで描かれた店舗の壁画を街中で見かけ、目がくぎ付けになった。その絵を描いた人を探し出し、自宅に押しかけ弟子入りを志願した。いったんは断られたが必死に食い下がり、どうにか許可された。

 その岩崎氏の下では、計4人の弟子が腕を磨いている。弟子の一人は、「岩崎さんの作品を雑誌で初めて見たとき衝撃を受けた。どうしても、ここで学びたいと思った」と打ち明ける。時代は変わっても、匠の技はこうして受け継がれていく。