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 学校の情報化という点で、日本は、世界各国の中でかなり遅れているのが現状だ。国内でも、パソコンをはじめとする情報機器やインターネットへの接続環境といったインフラの整備状況は、自治体による格差が大きいと言う。子を持つ親たちにとって、これはショッキングなことだろう。こうした状況を打開すべく、政府は「スクール・ニューディール」構想を打ち出した。ICT(Information and Communication Technology)環境の充実に向けた目標は、「教室のテレビをすべてデジタル化」「校務用コンピューターを教員1人に1台確保」「教育用コンピューターを児童生徒3.6人に1台確保」「全普通教室に校内LANを整備」の4つだ。この取り組みによって、情報化は進むのか。日本の学校は、今どんな課題を抱え、どう解決しようとしているのか。キーパーソンの一人である、内田洋行の大久保昇(おおくぼ・のぼる)取締役に話を聞いた。

(聞き手:中野 淳、菅井 光浩=日経パソコン)

日本の教育現場が抱える悩み

現場の先生から要求が上げられない

 日本の教育現場が、情報化に関して長く抱えていた悩みは、まさに「ニワトリが先か、タマゴが先か」というもの。つまり、「ICTという便利なものがあるから学校に導入しよう」という意見と、「効果が分かれば導入するが、学校にないから効果は分からない」という意見のぶつかり合いでした。2000年前後の時期は、日本と教育制度が似ている韓国やイギリスも同じような悩みを抱え、情報化に関するさまざまな計画を立てていました。その当時、日本より進んでいた国といえば、圧倒的に進んでいたシンガポール、アメリカ、カナダ、北欧くらい。日本の位置は、真ん中くらいでした。しかし残念ながら、日本では、その後も情報化が爆発的に進んだとは言えない状況です。

 日本では従来、教育委員会とは各自治体に適した教育の内容や方法を考えるための機関ではなく、文部科学省が定めた学習指導要領に沿った教育をするよう、学校に対して徹底させる機関であるという認識が一般的でした。それが、現在の学習指導要領で初めて、総合的な学習の時間のカリキュラムや予算を自分たちで考えなさい、と学校や教育委員会に対して求められるようになったのです。一般企業や、役所でも教育関係以外の部署では、予算というものは自分たちで見積もって申請するのが当たり前。しかし、学校や教育関係の部署では、それは当たり前ではなかったのです。そもそも、現場にいる先生からボトムアップで要求が上がっていくような仕組みではなかったからです。