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 「このインタフェースは直感的に使いやすい」と言われているものでも、「それは怪しい。単に慣れているだけかもしれない」と増井俊之氏は指摘する。「だって、文字を書く上で、ペンよりもいいデバイスがある可能性を誰も考えないでしょうし、ここまでペンが浸透した今、代わりのものができても誰も使わないでしょうから」。

 増井氏は常に、まだ人々が慣れきっていない分野で、見つかるかもしれない“もっといいもの”を探している。

 例えば、Webサービスなどのログインには、IDやパスワードの入力が必要だと思いがちだが、増井氏から見るとそうではない。慣れているというほかに、「作る方にとって楽だから残っている仕組みです。忘れてしまったユーザーのせいにできるから」。そこで増井氏の出した代替案では、ほかの人には分からなくても本人には分かり、決して忘れない画像クイズを組み合わせる。見ると最初は戸惑うが、それも慣れの問題。画像のアップロードなどについても新しい提案をし、自身のサイトで公開している。

 現実にある物を動かす試みもある。例えば、あるURLにアクセスすると、サーバーを介してモーターが動き、ドアの鍵を開ける。インターネットは普及したし、電子パーツは誰もが安く買えて、簡単に使えるようになっており、高価で特殊な装置がなくても実現できる。この試みを増井氏は「Poor Manfs UbiComp」(PMUC)と表現する。その組み合わせを思い付き、実際にやってみる人はまだ少ない。「でも、本当の発明家は、こういう未開拓な分野へ行くと思います」。

 「慣れ」という壁を乗り越え、PMUCが普及するには、「ユーザーが楽に使えて結果を自慢できること」が条件。さらに、「開発者がその現象を自慢できることも大事。自己満足も、一種の自慢です」。