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 このところにわかに賑やかになってきた日本語入力ソフト(IME)の分野に、また新顔が登場した。検索サービスを手がけるバイドゥが、2009年12月16日にベータ版を公開した「Baidu Type」だ。インターネット上のデータを解析し、辞書や変換の仕組みを構築。12月3日に公開されて話題となったグーグルの「Google 日本語入力」と同様のアプローチを採用する。

 なぜ同社が、IMEの開発に乗り出したのか。プロダクト事業部の稲垣あゆみ氏は「携帯電話のような文字入力が、なぜパソコンでできないのか、という疑問があった」と話す。携帯電話の文字入力といえば、一般的にはパソコンよりも制約が大きく、使い勝手に劣るとされてきた。だが学生のうちから携帯電話を使いこなしてきた世代にとっては、必ずしもそうではないという。現在27歳の稲垣氏自身、携帯電話のIMEに魅力を感じる一人。「携帯電話では、自分のよく使う文字をすぐに学習し、予測入力の上位に出してくれる。絵文字や顔文字もスムーズに入力できる。一方パソコンのIMEは、“自分が使い込んでいる”感じがしない。文字を入力することによる楽しさもあまりない」(稲垣氏)。

 日本法人の中でIMEの開発計画が持ち上がったのは2009年初頭。中心になったのは、稲垣氏をはじめとする若手メンバーだった。「SNSやメッセンジャーなど、ビジネス以外でも文章は書く。もっとインターネットを楽しめるIMEがあれば面白い、と考えた。IMEは、技術的に検索と親和性が高い。我々の技術を生かして、ネットを使い込んだ若い世代が使いやすいものを作りたかった」(稲垣氏)。実際に開発に着手したのは、2009年夏ごろ。稲垣氏と同じ27歳前後の社員たちが中核を担った。バイドゥは中国発の企業だが、Baidu Typeについては日本法人が独自に開発したという。

 日本語の基本的な語彙を網羅した辞書(IPA辞書)だけでなく、インターネット上のデータを基に生成した辞書を使う。このため、新語や口語表現に強いとする。「若者には、自分たちにしか分からない言葉をどんどん作り上げる力がある。こうした日本語の面白さを前面に出していきたい」(稲垣氏)。ベータ版で搭載した絵文字の変換機能に加え、いわゆる“ギャル文字”への対応も今後予定する。

 ユーザーインタフェースでも新たな試みをした。まず変換候補を縦でなく、横に表示する。ネット上の文書を閲覧する際は横方向に目を動かすことが多いため、こうした表示方法を採用したという。またひらがなを入力すると、入力したそばから随時漢字に変換する。この方法なら変換のために[Space]キーを押す必要がないため、打鍵数を減らせる。ユーザーの慣れを考慮して[Space]+[Enter]キーで確定する方法を初期設定としたが、[Space]キーだけで確定可能な上級者向け設定も用意した。

 今後はユーザーからのフィードバックを基に、さまざまな改良を重ねていくという。例えば、ネット上の文書を基に辞書を生成するため、日本語として不正確な候補が表示されかねない問題を改善する。さらに、予測入力機能にも磨きをかける予定だ。インターネット企業の強みを生かすなら、Google 日本語入力のサジェスト機能のように、ネットで広く使われている言葉を先回りして提示する方法もあり得る。同社にも同様の技術があるが、「こうした機能には賛否両論がある。ユーザーの意見を基に、どうするのが最適か考えていきたい」(稲垣氏)という。