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 デジタルカメラは今や、「一家に1台」を超えて「一人1台」も過言ではないほど普及した感がある。機能や性能が向上したデジカメは今後、どのようなツールになっていくのだろう。そしてユーザーは、どんな観点で製品を選ぶようになるのだろうか。

 カシオ計算機は1995年3月、他社に先駆けて液晶モニターを備えたコンパクトデジカメ「QV-10」を発売し、デジカメ市場が広がるきっかけをつくった。そのころからデジカメの開発に携わる中山仁執行役員に、デジカメ市場全体の展望と同社の製品開発戦略を聞いた。

■デジカメ開発に、これまでどう取り組んできましたか。

 QV-10の開発に当たったときから、我々はずっと、デジタルならではのカメラを追求してきました。例えば、液晶画面はデジカメに不可欠と考えましたし、動画や合成の機能もいち早く搭載しました。パソコンに画像を入力するツールという用途もアピールしました。

 しかし、デジカメは銀塩カメラとは違う、との意識が強過ぎたためか、その後の市場では苦戦を強いられました。パソコンがまだ今ほど一般的でなかったころ、一部のユーザーにはツール、ガジェットとして関心を持たれましたが、一般的なカメラユーザーには受け入れられませんでした。一般ユーザーが求めていたのは、銀塩カメラのフィルムがなくなるなど、アナログからデジタルへの分かりやすい変化でした。

 シェアを落とし後塵を拝していた我々は2000年4月、従来のラインアップを継続する部隊と、業界を客観的に見ながらデジカメを一から考え直す部隊に、開発体制を二分しました。デジタルでしかできない“何か”、しかも見た目で違いが分かり“あっと驚く”ものを作らなければと考えたのです。この取り組みが功を奏し、1年ほどで企画のめどが立ちました。そこで2001年4月、体制も再び一本化して、量産の準備を整えました。

 こうして完成したのが、厚さ約11mmの「EXILIM EX-S1」です。「ウェアラブルカメラ」という新しいコンセプトの下、フィルムを使う銀塩カメラでは不可能なカード型を実現しました。この製品によって、デジカメは「薄型」であることが当たり前になりました。取り出して電源を入れてすぐ撮れる、というサクサク感も重視しました。インパクトのある初代機を出した後、画素数を上げるなど機能を充実させ、市場でも評価され、ブランドとして認知されるようになりました。

■デジカメは今後、どのように進化するのでしょう。

 デジカメがここまで普及すると、使い方、楽しみ方も人によって大きく違ってきます。私は、これからのデジタルカメラの用途は、従来のカメラと同じ「記録する」ことと、全く新しい「楽しむ」ことの2つがあると思っています。

 前者は銀塩カメラを置き換える、これまで伸びてきた市場です。飽和感はありますが、技術の進化とともに、まだまだ広がると思います。ワールドワイドで見ても、大切なシーンを「記録」するためにデジカメを使うユーザーは、圧倒的に多いでしょう。

 後者は、カメラの使い方を変える、何かを作って楽しむ、楽しむために撮る、という新しい用途です。我々はこれを「クリエイティブフォト」と呼んでいます。そして、写真や動画の合成機能である「ダイナミックフォト」など、従来のカメラとは違う用途をつくり上げていこうとしています。

 ただ、両者は完全に区別されるものではなく、デジカメの基本性能をアップさせるための技術的な進化の中にも、新しい用途の芽は含まれています。例えば、「高速連写」に注目すると、スポーツの決定的瞬間をとらえたり、何気ない子どもの成長記録で今まで気付かなかった瞬間を撮ったりするのは、記録や基本性能アップの要素です。しかし、「ハイスピードムービー」を使って桜の花びらが落ちる様子をとらえ、超スローモーションで見るのは、目に見えない動き、斬新な動きを楽しむという新しい用途です。