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タイトル
出来 浩(でき ひろし)
1960年、鹿児島県生まれ。東京都立大学工学部機械科を卒業後、83年に日本アイ・ビー・エム大型ストレージシステム入社。03年、日立とIBMとの HDD事業統合により、日立GSTへ。06年、戦略企画室主管技師を経て、製品企画部部長に就任。09年から経営企画室部長を兼任する
(撮影:村田 和聡)

 テラバイトの時代を迎え、今なお猛烈な勢いで進むHDDの大容量化。ここまで容量が大きくなると、万一故障したときのダメージも甚大だ。そもそも、記録密度が上がれば、トラブルや故障のリスクも増えるはず。メーカーは、大容量と信頼性のバランスをどう取っているのか。第一線の技術者に疑問をぶつけてみた。


■そもそも、HDDの寿命はどれくらいでしょうか。設計上の目安のようなものはありますか。

 通常、われわれがHDDを設計するときには、ユーザーが5年間利用することを想定して評価や試験を行っています。これは、個々の部品の耐久性を調べるときもそうですし、HDD全体の信頼性をチェックするときもそうです。

 もちろん、実際にユーザーがお使いになるときは、偶発的なトラブルによって5年以下で故障する可能性もないわけではありません。しかし、一般的な使い方をしていれば、まず問題なく5年はクリアできると思います。

■高温多湿の環境下で使ったり、大きな衝撃を与えたりすることはよくないと言われますが、実際のところはどうでしょう。

 これも、ある程度の余裕を見込んで設計しています。例えば、設計温度は5度から55度の幅を持たせていますし、衝撃についても400Gの加速度を受けても耐えられる設計になっています。ですから、よほど過酷な環境でなければ問題ないと思います。

 ただ、落下などの大きな衝撃には気を付けてほしいと思います。HDDは多くの駆動系部品を抱えた精密機器ですからね。衝撃や振動は、故障の原因になりかねません。この点は要注意です。

■パソコンだけでなく、カーナビやHDDレコーダーの寿命も気になります。特にカーナビについては、真夏の車内はかなり高温になりますから。

 実は、カーナビのHDDは、パソコンと異なる設計基準値を採用しています。

 例えば、温度の許容範囲はマイナス30度から85度までと、パソコンよりかなり広めに取っています。記録密度も、パソコンの320GB/枚[注]に対して、カーナビは100GB/枚と抑えめにしています。ディスクのトラック幅や、ヘッドとディスクの間隔も広めなので、トータルで見るとかなり安全度の高い設計と言えます。

 それから、ご家庭で使われるHDDレコーダーですが、こちらは基本的にパソコンと同じ設計を採用しています。ただ、HDDレコーダーの場合、パソコンほどスピードを要求されないので、ディスクの回転数を下げ、音・消費電力・発熱を抑えています。この点は、信頼性の面で有利に働くかもしれません。

 

[注]ここで言う記録密度とは、1枚のディスク(プラッター)当たりの容量のこと