「にっけい」と入力して「日経」に変換。「いたくないよう」と入力して「委託内容」のつもりが「痛くないよう」─。パソコンの日本語変換は悲喜こもごもだが、この仕事を担っているのがIME[注1]と総称される日本語入力ソフトだ。画面上で「言語バー」として表示される縁の下の力持ち。Windowsには標準で「MS-IME」[注2]というマイクロソフトの製品が組み込まれており、メールやExcelなどさまざまなソフト上で利用できる仕組みになっている。
このIME、標準以外の製品も利用できるのをご存じだろうか。そして変換精度や機能、使い勝手はIMEの種類で結構違う。高性能なIMEとしてはジャストシステムの「ATOK(エイトック)」が有名だが、これは有償。本特集で注目したいのはフリーの製品だ。
まずはネット検索でおなじみのグーグルが開発した「グーグル日本語入力」。そして中国のネット検索企業「バイドゥ(百度)」が開発した「バイドゥタイプ」。大手ネット検索企業の日本法人が独自に相次いで無償IMEをリリースしたことで、今年の春は注目を集めた。
さらに極めつきがマイクロソフトの方針転換だ。今年6月に、Office 2010に付属するMS-IMEの最新版を無償提供したのである。同社では初の試みだ。
ここに至り我々の手中には、3つの大手フリーIMEの選択肢がそろう運びとなった(図1、図2)。

[注1] Input Method Editorの略で、アイエムイーと読む。仮名漢字変換ソフト、日本語入力ソフトとも言われる
[注2] Windowsに付属のものはMicrosoft IME、オフィスに付属のものはMicrosoft Office IMEという。本特集ではMS-IMEと総称する