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 AMDは2008年12月15日、以前から「Kuma(クマ)」の開発コード名で呼ばれていた新型のデュアルコアCPU、Athlon X2 7000シリーズを正式に発表した。同社のマルチコアCPU、Phenomシリーズと同じ設計の製品で、現行のSocket AM2に取り付ける。日経WinPCはAthlon X2 7000シリーズを入手、性能や消費電力を測定した。

 Athlon X2 7000シリーズは、Phenomと同じダイ(半導体)で作られている。4コアのうち、2コアの動作を停止した(あるいは2コアしか動かなかった)バージョンだ。今回AMDが発表したのはAthlon X2 7750 Black Editionと同7550の2モデル。7750はその名の通り、動作倍率が可変でオーバークロックしやすくなっている。7750の実勢価格は9000円前後の見込みだ。

 動作周波数は7750が2.7GHz、7550が2.5GHz。Phenomシリーズの動作周波数は、Phenom X4 9950 Black Editionの2.6GHzが最高だった。Athlon X2 7750はそれを上回る、Phenom系列の中では最も高い周波数で動く。とはいえ、現行のAthlon X2シリーズに比べれば低い。現行品で2.7GHzなのは5200。その上に、2.9GHzの5600、3.1GHzの6000などがある。現在は店頭から姿を消したが、かつては3.2GHzの6400も存在した。Phenom系列のダイは、動作周波数がなかなか上がらないのかもしれない。

 Athlon X2 7000シリーズのTDP(熱設計電力、実使用時の最大消費電力)は95W。これはトリプルコアのPhenom X3やクアッドコアのPhenom X4の下位モデルと同じだ。既存のAthlon X2は通常版が65W、低消費電力版が45Wなのでずいぶん高い。TDPは消費電力そのものではないが、TDPが高いCPUは平均的な消費電力も高い傾向にある。

既存のAthlon X2、Phenom X3を交えて性能と消費電力を測定

 今回のテストでは以下のCPUを用意した。

  • Phenom X3 8750(2.4GHz)
  • Phenom X3 8450相当品(2.1GHz)
  • Athlon X2 7750 Black Edition(2.7GHz)
  • Athlon X2 6000(3GHz、2次キャッシュ1MB×2、TDP125W)
  • Athlon X2 5600(2.9GHz、2次キャッシュ512KB×2、TDP65W)
  • Athlon X2 5200(2.7GHz、2次キャッシュ512KB×2、TDP65W)
  • Athlon X2 4850e(2.5GHz、2次キャッシュ512KB×2、TDP45W)
  • Pentium Dual-Core E5200(2.5GHz)

 Phenom X3は、Athlon X2よりも上位の製品として2モデル用意した。価格が7750と同クラスなのは2.1GHz動作の8450なのだが、評価用CPUがなかったため8750の倍率を変更して8450相当品にしている。既存のAthlon X2は、7750と同じ動作周波数の5200と上位の5600、さらに6000を用意した。この6000は現在販売中の2次キャッシュ512KB×2、3.1GHz動作の製品ではなく、1MB×2、3GHzという初期の製品。TDPも125Wと高い。一部テストでは2.5GHzの低消費電力版、Athlon X2 4850eも実行した。IntelプラットフォームではPentium Dual-Core E5200をテストした。実勢価格は8000~9000円と、7750より少し安い。

 CPU以外の評価用パーツは以下の通りだ。

  • 【マザーボード】M3A78-T(ASUSTeK Computer、AMD 790GX搭載)、GA-EP45-UD3R(GIGABYTE TECHNOLOGY、Intel P45搭載)
  • 【メモリー】DDR2-800 2GB×2
  • 【HDD】WD Caviar Black 1TB(Western Digital、WD1001FALS)
  • 【グラフィックスボード】GF P96GT/1GD3(GALAXY Microsystems、GeForce 9600GT搭載、メモリー1GB)
  • 【電源ユニット】AS Power Silentist S-650EB(アビー、定格出力650W)
  • 【OS】Windows Vista Ultimate Service Pack 1 32ビット日本語版

 省電力機能は性能評価時には無効にしておき、消費電力測定時には有効にしている。

Athlon X2の既存上位モデルと同等性能、マルチコア用途はPhenom X3に負ける

 ではテスト結果を紹介しよう。まずはSiSoftwareの「Sandra 2009」のCPU関連テストだ(グラフ1)。グラフの伸びはすべてAthlon X2 5200の値を100%としたときの相対値になっている。このテストはCPUのみを使う処理でメインメモリーやHDDの影響はほとんど受けない。CPUの設計が同じなら、結果は動作周波数とコア数に比例する。7750は、同じ周波数の5200に比べて整数演算がわずかに落ちているものの、浮動小数点演算性能は向上している。総合的には3GHzで動作する6000よりも演算能力が高い。

 グラフ2はSandra 2009のメモリー転送テストの結果だ。FSBがボトルネックになってしまうPentium Dual-Core E5200に対しては、AMD製CPUはどれも優位性を示している。7750は特に速いわけではなく、従来のAthlon X2と同レベルの転送速度だ。グラフ3はキャッシュメモリー内の転送速度を調べるテストの結果だ。このテストもコア数と動作周波数が影響する。Phenom系列の3モデルは、Athlon X2に比べてどれもキャッシュが速い。また、128K~1MBの領域ではPentium Dual-Core E5200よりも高速だ。

 グラフ4は3D画像レンダリングがベースのベンチマークソフト「CINEBENCH R10」の結果だ。グラフは上側が1コアだけで処理したときのスコア、下側がすべてのコアを使ったときのスコアになっている。上側はコアの設計と動作周波数、下はそれらに加えてコア数が影響する。従来のAthlon X2は動作周波数に応じてスコアを伸ばしている。7750は同じ周波数の5200よりは1割ほど速く、2.9GHz動作の5600を上回るスコアを出している。しかし、3GHzの6000にはかなわない。複数コアを使った処理では、2.1GHzのPhenom X3 8450に差を付けられてしまう。複数コアを使い切るように作られたソフトウエアなので、当然の結果と言える。

 より一般のアプリケーションに近いテストとしてFuturemarkの「PCMark05」「PCMark Vantage」も実行した。グラフ5がその結果だ。いずれも総合スコアで、メモリーやHDD、グラフィックス機能の性能も影響する。CPUの演算能力の違いが反映されにくいためか、7750、6000、8450がほぼ同じスコアとなっている。

 CPUだけを酷使する処理としてハイビジョン動画エンコードの性能も調べた。グラフ6はペガシスの「TMPGEnc 4.0 XPress」を使った結果だ。ここでは7750の性能の伸びが目立つ。同じ周波数の5200に比べて2~3割ほど速いのだ。ここまで紹介してきたテストではほぼ互角だった6000よりも明確に速い。Phenom系列でのコアの改良やキャッシュ増設の効果が働いた、と見るべきだろう。Phenom X3においてWMV変換の性能が伸びていないのはアプリケーションの作りによるものだろう。トリプルコアにもかかわらず、2コア相当分しかCPUが使われていないようで処理が速くならないのだ。過去の同じテストでも同様の結果だった。

 最後に簡単なゲームテストとしてオンラインゲームをベースにした「真・三國無双 Online ベンチマーク」の結果を挙げておく(グラフ7)。オンラインゲームは、より多くのユーザーに楽しんでもらうために、3D表示のタイトルであっても、比較的描画負荷が軽い傾向にある。限界ぎりぎりのゲーム性能ではなく、一例としてとらえていただきたい。このテストは値がぶれがちで、わずかな数値の違いが絶対的な性能差とは言い切れないのだが、7750は5600や8450よりは速く6000には及ばない、という見方もできる。