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 電子情報技術産業協会(JEITA)は2009年2月13日、文化庁が同年2月3日に公表していた著作権法施行令の改正案に対する意見(パブリックコメント)を提出し、その全文を明らかにした。今回の改正の柱である、Blu-ray Disc(BD)に対する私的録画補償金の賦課について、修正を求めている。BDへの補償金賦課そのものの撤廃を求めてはいないものの、「無料デジタル放送の録画は補償金の対象外と明記すべき」とするなど、実質的にBDへの補償金賦課に反対する内容となっている。

 今回JEITAが表明した意見は、大きく3点。(1)BDおよびDVDについて、デジタル放送を録画した場合は補償金の対象外とすべき、(2)2011年のアナログ停波までをめどにした暫定措置であると明記すべき、(3)BD以外の機器や媒体への賦課を避けるためレーザー波長とレンズ開口数を記載すべき――である。

 JEITAの意見は、2008年6月に経済産業省と文部科学省との間で交わされた合意文書を基に、今回の著作権法施行令の改正もその内容に沿って行うべきというもの。この合意文書は一般公開されていないが、JEITAは2009年1月27日に両省に対して情報公開請求を行い、両省から開示を受けたとしている。

 合意文書では、「現在のブルーレイディスクレコーダーがアナログチューナーを搭載しておりアナログ放送のデジタル録画が可能であることも踏まえ、暫定的な措置として、ブルーレイディスクに係る専用機器及び専用記録媒体を政令に追加する。なお、両省は、この政令の施行後3年を目途として、この政令の施行状況等について検討を加え、その結果に基づいて適切な対応を行う」と記載されている。また、「無料デジタル放送の録画の取扱等私的録音録画補償金制度のあり方については、早期に合意が形成されるよう引き続き努力する」との記載もある。

 これに基づきJEITAは、BDへの補償金賦課は、アナログチューナーを搭載したBDレコーダーにおいて、アナログ放送を録画した場合に対象となるものと解釈するべきと指摘。「いまだ解決されていないデジタル放送の録画についてまで(補償金の)対象として追加すべきでないのは明らかである」として、地上デジタル放送や無料のBSデジタル放送などを録画する場合は補償金の対象としないよう求めている。

 無料デジタル放送を補償金の対象とするか否かは「文化審議会著作権分科会では審議の途上であり結論が出ていない」とした上で、「仮に本政令案のように、対象となる機器の範囲を明確に限定しないまま施行された場合、政令上は、『無料デジタル放送の録画』のための機器に対する補償金支払義務の有無に疑義が生じ得る」と語り、現状のグレーゾーンのままでは、メーカー側が無料デジタル放送からの補償金支払いに協力するのは法的にも問題があるとする。

 JEITAではこの考え方を基に、BDだけでなくDVDについても、「『アナログチューナーを搭載して』おらず、『アナログ放送のデジタル録画』ができない機器である場合には、補償金支払義務の対象でない点も明確にされるべきである」と問題提起している。

 BDへの補償金賦課については、合意文書で「暫定的な措置」と明記されているとした上で、「本改正案では、暫定性に関する一切の記載は見当たらない。このことは本改正案の内容が、貴省(文科省)がこれまで表明されてきた考えと一致しないのではないか」「『暫定』としておきながら、アナログ放送停波後も、補償金の対象であることが継続され、恒久的な措置となる可能性があると懸念される」と問題点を指摘する。JEITAでは、合意文書にある「施行後3年」は2011年7月のアナログ停波をめどとしたものとみており、「デジタル放送の録画についての取扱につき解決されない場合でも、遅くとも2011年7月24日までのアナログ放送が停波する時期までの暫定的な措置として位置づけられるのが妥当である」との考えを示した。こうした暫定性を明確にするため、「失効規定を置くなどの法的な手当が必要である」とする。

 著作権法施行令の改正案においては、BDの定義について、(1)直径120mmの光ディスクである、(2)レーザー照射面から記録層までの距離が0.1mmである、(3)記録層の渦巻状の溝がうねっており、かつ連続している――などと記載している。これについてJEITAは、「BDを特定する要素として、光ディスクの保護層の厚さ0.1mmに加え、レーザー波長405nm及びレンズ開口数0.85の要素を追加して規定することは必須要件である」と記載している。仮に現状の改正案のまま著作権法施行令が改正された場合、「今後新たに登場する録画技術にかかる規格が、何ら議論なく補償金の対象に自動的に該当するとされてしまうことになりかねない」と懸念している。ここ数年の補償金見直しの議論では、権利者側から「HD DVDはDVDの定義文に当てはまるため、議論するまでもなく補償金の対象である」との意見も出ていたことも背景にあるとみられる。

 文化庁では、今回のパブリックコメント募集は2009年3月4日までとし、その意見を踏まえて同年4月1日に著作権法施行令の改正を実施する意向を示していた。法的にはパブリックコメントで寄せられた意見には拘束力がないが、主要な利害関係者であるメーカー側が表明した反対意見であることから、文化庁の対応が注目される。また、権利者側は2月5日に開催した記者会見で「一部メーカーが、アナログチューナー非搭載のDVDレコーダーについて、補償金の対象にならないという考えを持っているとの話を聞く。万一それが事実ならば、明確な法令違反として法的措置も辞さない」(実演家著作隣接権センターの椎名和夫運営委員)と表明しており、今回のJEITAの意見で権利者側の懸念が現実になった形であり、権利者側の反発も確実な情勢。補償金をめぐる議論は、再び一触即発の局面を迎えそうだ。