PR

 文化庁長官の諮問機関で、著作権制度の抜本的な見直しを図るための新組織である文化審議会 著作権分科会 基本問題小委員会の第1回会合が、2009年4月20日に開催された。事務局である文化庁著作権課は、私的録音録画補償金や著作権の保護期間、日本版フェアユース規定など個別の案件ではなく、あくまで著作権制度全般について議論を求める方針を重ねて表明した。2009年5~6月に予定している第2回以降、本格審議がスタートする見込みだ。

 基本小委の委員は17人。主査は、上部組織の著作権分科会で分科会長を務める野村豊弘氏が兼任する。本格審議入り前ということもあり、この日の会合の出席者は10人であった。

 基本小委を設置した狙いについて事務局は、「2008年度の著作権分科会の報告書を2009年1月にまとめたが、私的録音録画補償金や保護期間の見直し問題について合意ができなかった。この背景には、著作権制度に対する基本的なスタンスの違いがあるのではないかと考えた。そうした著作権制度全般について、幅広く文化論的,文化政策的な見地から意見をいただきたい」(文化庁 長官官房 著作権課の黒沼一郎課長補佐)と説明した。

 基本小委の議論の進め方に関連し、いではく委員が事務局に対し「文化庁がこの基本小委で求めているものは何なのか、明確にしてほしい」と質問。事務局は「委員の意見を整理して、今後の進め方を考えていきたい」(文化庁 長官官房 著作権課の山下和茂課長)と回答するにとどめた。会合の後で山下課長に確認したところ、「よく誤解を受けるが、文化庁が議論のレールを敷くようなやり方はしない。委員の出身母体を踏まえたポジショントークも求めていない。あくまでまっさらなところから、委員同士の議論で著作権制度全体のあり方を改めて議論いただき、まとめてもらう場と考えている」(山下課長)と説明した。

 補償金や保護期間といった個別の施策については、「そうした話が2~3回くらい出てくることはあるかもしれないが、個別の施策を中心に据えることはしない。昨年までの議論で結論が出なかった話を、仮にそのまま基本小委の議題にしても、実りある議論にはなりにくいのではないか」(黒沼課長補佐)とし、一線を画す考え。基本小委の設置期間や、報告書をまとめる時期についても特に定めないという。「そもそも何らかの結論を出せるかどうかも分からないが、それでも著作権制度全般について、根本から話し合ってみることに意義があると考えている」(黒沼課長補佐)。

 この日の会合では、「権利者と利用者という議論、それぞれの立場からの議論から離れて、少し次元を変えた議論が必要だと思っている」(佐々木正峰委員)、「これだけ世の中が動いているのに、補償金や保護期間が第一、第二の議案のままなのか。幅広い方から意見を集めて、みんなで客観的に全体を俯瞰(ふかん)して議論を進めたい」(野原佐和子委員)、「委員は、それぞれの利害を持って会合に臨むとかたくなになってしまう。一人の有識者として、個別の利害を離れた議論をするのが大事」(三田誠広委員)、「これまでは、委員の名前や立場をうかがっただけで、どのような発言をするか見えてしまうことが多かった。もっと違った視点で話ができるのではないか。もっと面白い視点で議論したい」(宮川美津子委員)といった発言が聞かれた。

 野村主査は、「従来の発想は、まず著作権の定義から出発して問題の結論を導くことが多かった。例えば中古のゲームソフトの著作権を考える際、映画の著作物の考え方をゲームソフトにも当てはめて議論するといった具合だ。そうではなく、例えばある人の利益を保護すべきか、対価を払うべきか、損害が起きているのかなどについて、いわば裸の価値判断をして、そこから演繹的に著作権を見直すことも必要だと考えている。それで新たな展望が開ければよいのではないか。委員の多くは補償金や保護期間、フェアユースといった個別論が念頭にあると思うが、それ以外のことも幅広く話し合っていきたい」との考えを示した。

文化審議会 著作権分科会 基本問題小委員会の委員
氏名(五十音順・敬称略)所属など
石坂 敬一日本レコード協会(RIAJ)会長
いで はく作詞家、日本音楽著作権協会(JASRAC)理事
大林 丈史日本芸能実演家団体協議会(芸団協)専務理事
河村 真紀子主婦連合会常任委員
後藤 雅実日本放送協会(NHK)理事
迫本 淳一日本映画製作者連盟(映連)参与
佐々木 正峰国立科学博物館長
里中 満智子マンガ家
瀬尾 太一日本写真著作権協会常務理事
玉川 寿夫日本民間放送連盟(民放連)専務理事
苗村 憲司駒澤大学教授
中村 伊知哉慶応義塾大学教授
野原 佐和子イプシ・マーケティング研究所社長
野村 豊弘(主査)学習院常務理事、学習院大学教授
松田 政行弁護士、中央大学法科大学院客員教授
三田 誠広作家、日本文藝家協会副理事長
宮川 美津子弁護士