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 日本音楽事業者協会(音事協)、日本芸能実演家団体協議会(芸団協)、音楽制作者連盟(音制連)は2009年4月30日、映像コンテンツの二次利用に関する許諾業務を担う一般社団法人「映像コンテンツ権利処理機構」(仮称)を5月に設立することを発表した。俳優やミュージシャンなどの実演家が映っている映像コンテンツをインターネット向けに二次利用する際、著作隣接権にまつわる二次利用申請を同機構でまとめて受け付け、処理する仕組みを整備する。2010年4月をめどに、許諾手続きの受付を始める意向だ。

 これまで実演家の著作隣接権は、芸能の分野や所属プロダクションなどに応じて3団体がそれぞれ管理している。さらに、(1)権利者団体が実演家から委任を受け管理する、(2)個々の実演家が自身で管理する、(3)権利を持つ実演家やその連絡先が不明である、など複数のケースがある。権利者団体が委任を受け管理する場合、事前に定めた使用料規定に基づき、二次利用申請があった場合に権利者団体が許諾の是非や使用料の交渉を代行する「一任型」と、そのつど許諾の是非や使用料を交渉する「非一任型」に分かれるなど、扱いが複雑である。このため、放送局などが映像コンテンツを二次利用しようとする場合、申請前に個々の実演家の所属団体と、著作隣接権の管理形態を下調べした上で、1件ずつ申請と交渉を進めていくという手間が必要であった。

 新機構では、こうした著作隣接権にまつわる二次利用申請を一括で受け入れ、諾否の回答や非一任型の場合の使用料交渉などを行う。従来は二次利用希望者が負っていた下調べの手間を軽減し、二次利用許諾までの期間を短縮することを狙う。現在のところ一任型の管理業務は、3団体が共同運営する実演家著作隣接権センター(CPRA)の担当業務となっているが、新機構が運営開始する2010年4月をめどに、新機構へ移行することも検討している。また、新機構が受付対象とするのは、当面はインターネット上での動画配信に限定するが、将来はDVDなど他用途の二次利用についても新機構で受け付けられるよう、態勢を順次拡大する意向だ。「ネット向けの二次利用申請は手間がかかるが、使用料収入はまだ少ない。許諾業務を集約できれば、権利者にとってもコスト削減というメリットが生まれ、二次利用希望者との双方でプラスになる」(CPRAの椎名和夫運営委員)と判断した。

 新機構の正式名称や所在地、代表者などの詳細は、5月中に決定する。「現在は新機構の設立で3団体が合意した段階。大型連休明けに早急に動き、設立の登記までを5月の早い段階で済ませたい」(椎名氏)とする。その後、2010年4月までに具体的な運営スキームを決めていく方針だ。

 映像コンテンツのネット上における二次利用をめぐっては、コンテンツ企業の経営者や知的財産権法の学識経験者らで構成する「デジタル・コンテンツ法有識者フォーラム」が2008年3月に「ネット権」構想を提言している。現行の著作権や著作隣接権のうち、映像コンテンツのネット向け二次利用では許諾権を放送局やレコード会社、映画会社などに集約することで、許諾業務の手間を軽減することを狙っている。

 これに対し実演家側は、許諾権が報酬請求権に切り下げられ、二次利用の諾否を実演家自身が決められなくなることを懸念する。「俳優やミュージシャンにとって、メディアに対する露出を自らコントロールすることは、人気の過熱を抑え長期間活躍していくために重要なこと。許諾権を奪われ、露出のコントロールができなくなると、十分な投資の回収もできないまま一瞬だけ爆発的に露出し、あっという間に飽きられてしまう。実演家の陳腐化を早めるだけでプラスにならない」(椎名氏)。運営開始の11カ月前に新機構の設立を先行発表した背景には、こうしたネット権の構想や、2009年度の文化審議会で取り上げられる予定の日本版フェアユース規定の議論に対し、先手を打っておきたいとの意向があるとみられる。