Intelは2009年9月7日(米国時間)、デスクトップパソコン向けCPU「Core i7」「Core i5」(開発コード名Lynnfield)3モデルを発売した。CPUの基本設計は2008年11月に発売した既存のハイエンドCPUであるCore i7-900番台(開発コード名Bloomfield)と同様だが、今回の製品は中位モデルと位置付けており、一部仕様を削って価格を抑えている。また、Core i7-900番台のソケットはLGA1366であったが、今回の製品は新設の「LGA1156」というソケットを使用する。また、今回の新モデルとセットで使用する新チップセット「Intel P55 Express」も併せて発表した。
今回発売したのは、2.93GHz駆動のCore i7-870、2.8GHz駆動のCore i7-860、2.66GHz駆動のCore i5-750。3モデルとも4コア(クアッドコア)CPUである。Core i7とCore i5の違いは、1個のコアを仮想的に2つのコアと見なして命令を並列処理するHyper-Threading(HT)機能の有無。Core i7-870/860はHT機能を備えており、4コアで8スレッドの並列処理が可能。Core i5-750はHT機能を備えておらず、4コアで4スレッド処理となっている。3次キャッシュ(L3)の容量は、Core i7-900番台と同じく8MBとなっている。
ブランド名 | Core i7 | Core i7 | Core i5 |
---|---|---|---|
プロセッサー・ナンバー | 870 | 860 | 750 |
動作周波数 | 2.93GHz | 2.8GHz | 2.66GHz |
OEM向け価格(1000個出荷時の単価) | 5万4560円 | 2万7570円 | 1万9030円 |
小売りパッケージ(クーラー付き)の実勢価格 | 約6万円 | 約3万円 | 約2万1000円 |
開発コード名 | Lynnfield | Lynnfield | Lynnfield |
マイクロアーキテクチャー | Nehalem | Nehalem | Nehalem |
2次キャッシュ容量 | 各コア256KB | 各コア256KB | 各コア256KB |
3次キャッシュ容量 | 共有8MB | 共有8MB | 共有8MB |
QPI | - | - | - |
コア/スレッド数 | 4/8 | 4/8 | 4/4 |
Hyper-Threading | ○ | ○ | - |
Turbo Boost(有効時最大動作周波数) | ○(3.6GHz) | ○(3.46GHz) | ○(3.2GHz) |
対応メモリー | デュアルチャンネルDDR3-1333 | デュアルチャンネルDDR3-1333 | デュアルチャンネルDDR3-1333 |
拡張版SpeedStep | ○ | ○ | ○ |
仮想化支援機能 | ○ | ○ | ○ |
拡張命令 | SSE4.2 | SSE4.2 | SSE4.2 |
製造プロセス | 45nm | 45nm | 45nm |
TDP | 95W | 95W | 95W |
今回の3モデルは、LGA1156という新たなソケットを採用。CPUのパッケージ寸法は、Core i7-900番台でLGA1366を採用した際に大型化したが、今回の新モデルで再び小型化し、Core 2 Quad/Duoなどで採用していたLGA775に近いものとなった。ソケットに合わせて、CPUファンの寸法も変更されている。CPUクーラーの一部製品で、プッシュピン部を交換することで複数のソケットに対応としているものもあるが、LGA775用やLGA1366用のCPUクーラーはそのままでは転用できない。
今回の3モデルでは、既存のCore i7-900番台で搭載していた機能を一部削っている。例えば、Core i7-900番台のメモリーアクセスは3チャンネル並列であったが、今回の新モデルは2チャンネルで、搭載可能な最大メモリー容量は16GBとなっている。また、Core i7-900番台では、独自インターフェースのQPI(QuickPath Interconnect)で、CPUとチップセットとのデータ伝送を高速化していたが、今回の新モデルではQPIを省き、Core 2 Quadなどと同様のDMIを採用している。
一方、既存のCore i7-900番台より仕様が強化されている部分もある。例えば、熱や電流に余裕がある場合にCPUの動作周波数を引き上げるTurbo Boost機能だ。既存のCore i7-900番台では、133MHz刻みで最大2段階の引き上げが可能であった。今回の3モデルは既存製品より多段に引き上げられる仕様となっている。具体的には、Core i7-870とCore i7-860は、動作中のコアが1個だけであるなど熱的に余裕がある場合、133MHzで最大5段階、すなわち667MHzも周波数を引き上げられる。Core i5-750も最大4段階、533MHz引き上げられる。シングルスレッド処理のアプリケーションソフトで大量のデータを処理する場合などに活用できる。このほか、Core i7-870では、4コアすべてが動作している場合でも、2段階(266MHz)の引き上げが可能だ。
このほか、Core i7-900番台のメモリーコントローラーはDDR3-1066までのサポートだったが、今回の新モデルではDDR3-1333を公式にサポートする。Core i7-800番台、Core i5-700番台は、グラフィックス用のインターフェースであるPCI Express 2.0 x16をCPUコアに統合した点も特徴。Core i7-900番台では専用チップセット「Intel X58」が内蔵していた。複数のグラフィックスボードで描画性能を高める、AMDの「CrossFire」やNVIDIAの「SLI」も利用できる。ただし、Intel X58ではPCI Express 2.0 x16を2系統利用できたが、Core i7-800番台、Core i5-700番台はPCI Express 2.0 x16が1系統。2系統で使うときはx8になる。
Core i7-800番台やCore i5-700番台と組み合わせるIntel P55は、従来の「ICH10R」の機能を踏襲する。USB 2.0のポート数はICH10Rから2個増えて14個となり、PCI Express x1のバージョンが2.0になった(転送速度は片方向2.5Gbpsと1.1相当のまま)。Serial ATAは従来通り、速度が3Gbps、ポート数は6。RAID機能もある。
日経WinPCはPC自作の総合情報誌です。 >> 最新号の目次とご購入はこちら