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 国立情報学研究所(NII)の越前功准教授とシャープは2009年9月17日、映画館における映画の盗撮を防止する技術を開発したと発表し、報道関係者向け説明会で試作機を実演展示した。2~3年後の実用化を目指す。

 この技術では、映画館のスクリーン背面に波長780nm以上の近赤外線LEDを取り付け、背面側からスクリーン表面の微細な孔を通してスクリーンに投射する。一般に、人間が感知できる可視光線の波長は380nm~780nm程度であるが、ビデオカメラやデジタルカメラの撮像素子であるCCDやCMOSセンサーは、撮影時の感度を高めるため200nm~1100nm程度とより幅広い波長の光線を感知でき、撮像素子より色は異なるが赤や青の可視光として録画される。このため、人間は感知できないが撮像素子は感知できる波長の光を「ノイズ光源」として投射することで、一般の視聴に影響を与えずに映画の撮影行為を阻止できるとする。具体的には、画面中央に近赤外線で縞模様を出したり、映画館内での映画の撮影が違法である旨の警告を投射することが可能という。380nm以下の紫外線は人体に有害な可能性があるため、780nm以上の近赤外線を採用した。

 実演展示した試作システムでは、100型スクリーンの背面中央に9個の「ノイズ光源ユニット」を設置。個々のユニットには18個の近赤外線LEDを装着。1ユニット当たりの出力は30W。盗撮映像が出回った場合の視聴妨害効果を高めるため、近赤外線LEDは常時点灯ではなく10Hzで点滅させている。「常時点灯と5/10/15/20Hzの点滅で10人の被験者による主観評価を行ったところ、10Hzで点滅させると視聴者が最も邪魔に感じることが確認できた」(越前准教授)。試作システムの製造コストは数十万円という。近赤外線を低減するカメラ用フィルターによりノイズ光を回避できるのでは、との懸念については、「そうしたフィルターを装着することで近赤外線によるノイズ光源を目立たなくすることはあり得るだろうが、その場合は盗撮しようとする映画の映像そのものも暗くなってしまう」(越前准教授)として、問題は小さいとの見方を示した。

 映画の盗撮対策としては、2007年8月施行の「映画の盗撮の防止に関する法律」や、盗撮映像が出回った際に盗撮場所を特定できる「映画館ID」を埋め込む電子透かし技術などがある。越前准教授も以前は電子透かし技術の研究開発に取り組んでいたが、「電子透かしは不正者による盗撮行為を心理的に抑止する効果はあるが、録画行為そのものを防止することはできないし、不正者の検挙も現実的には難しい。抑止ではなく防止に役立つようにしたいと考えた」(越前准教授)という。

 今後は、妨害効果の高い光源の配置方法の検証や、近赤外線を含む映画を長時間鑑賞した場合の安全性の証明、近赤外線低減フィルターを装着した状態での実証などを進めていく。

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