「国際標準価格」を唱え、世界各国のPC市場で成長を続けるAcer。日本でも、ネットブック「Aspire One」による躍進は記憶に新しい。
Acerは、製品製造を外部に委託し、自社は製品開発とデザイン、マーケティングを担当する。競合企業よりも手ごろな価格で製品を提供できているのは、この仕組みがうまく動いているからだ。
分業体制で課題になるのが、きめの細かい品質管理。製造委託企業にどの程度品質管理を委ね、どの程度の結果を求めるのか。その運営手法とコストバランスが問われる。
そこで、Acerグループを統括するJ.T.ワン会長(J. T. Wang、Chairman)に品質管理の方針を、プロダクトマーケティング部門で管理業務も統括するジョン・C・リン副社長(Associate Vice President、Product Marketing BU、IT Products Global Operations)に、Acerの品質管理に対する取り組みについて聞いた。
ユーザーの満足度アップ、これがすべて
品質管理の方針をワン会長に聞くと、こう断言した。「すべてのユーザーが満足する品質、それがAcerのクオリティーだ」。消費者が製品を選ぶには、性能や機能、デザインなどさまざまな基準がある。そのなかで、誰にでも当てはまるのが品質。だからこそ「競合他社に勝つためなどとは考えない。使った人が満足する、それだけを考えて品質管理する」(ワン会長)というのだ。
Acerは製造部門を完全分離し、複数の製造委託企業と協業して生産している。当然、一元的に品質を管理できるわけではない。また、品質といっても、製造過程から製品輸送、製品の使われ方を想定した完成度など、さまざまな要素がある。これら多様な品質を向上させるには、「設計段階から品質を意識することが重要」(ワン会長)という。
製造委託先でも品質管理を徹底
ワン会長の理念を具体化するのが、リン副社長の役目だ。
Acerの品質管理プログラムは、製品の開発・設計段階と製造段階の2種類ある。特に、ワン会長が言うように設計段階の品質管理を重要視している。「品質向上を意識して設計し、部品を選ぶ。この管理がなければ、量産時に高い品質は保てない」(リン副社長)からだ。どの製品も開発プロジェクトの段階からテストを繰り返し、エンジニアリングサンプルでは数百台を使った検証も珍しくないという。
開発段階で繰り返す検証には、製品の落下や振動テスト、キーボードや液晶部分のヒンジの耐久テストなどがある。販売する国や地域の温度、湿度に合わせて複数のテスト方法を用意、恒温層による負荷試験も繰り返し実施する。
こういったAcer独自のテストは「製造委託する企業でも、量産時に実施している」(同)。製造委託先は、ウィストロンやクォンタ、コンパルなど5社程度。もちろん企業によって製造設備や検査設備は異なる。そこで、業界標準となっている設備を使ったテストを導入することで、共通した条件で品質管理できるよう工夫しているという。さらに委託先による品質管理だけでなく、Acerが派遣した監査員による品質管理試験を定期的に実施することで、品質の維持管理を徹底している。Acerではこれらの品質管理を“SOP”(スタンダード・オペレーション・プロセス)と呼んで製造委託企業と共有している。
製品開発には、量産工程からのフィードバックを常に生かしているという。製品開発時の品質管理には、製造委託先のエンジニアも加わって議論する。量産段階での問題点を開発担当に認識させることで、さらなる品質向上を図ろうというわけだ。「品質は高くて当たり前。努力を怠った瞬間に、ブランドはくずれる」(同)と、品質管理に対する姿勢は厳しい。