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 2010年9月16日から幕張メッセで開催されている東京ゲームショウ。広い会場の一角に、若々しい活気を感じる空間がある。未来のゲームクリエイターを目指す学生たちの展示が集まる「ゲームスクールコーナー」だ。学生たちに話を聞くと、実社会で生かせるさまざまなスキルを、ゲーム制作を通じて身に付けている様子がうかがえた。

 授業の一環でゲーム制作に取り組んでいるのが、東京工科大学のメディア学部。2年生から3年生にかけての約1年半にわたって、チームで一つのゲームを制作する。まず2年生の最初の授業で、自分が作りたいゲームのコンセプトを全員にプレゼン。そこで評価された生徒は、そのコンセプトに賛同する仲間を集めてチームを結成する。集まった十数人が力を合わせ、ゲームショウ出展に向けて開発を進めるというわけだ。

 「ANIMINIA」というゲームの開発プロジェクトを率いた杉田直史さんは、「多人数のプロジェクトをうまく進めるのに苦労した」と振り返る。もちろんグラフィックスやプログラミングなど個々の作業も大変だったが、それ以上にプロジェクトマネジメントの大変さを思い知ったという。

 ゲームは、グラフィックス、音楽、プログラムなど複数の構成要素から成り立っている。各シーンごとに、それぞれの要素を考えて組み立てなければならない。そのシーンでどんな動きや音楽が求められるのかを書き出して仕様書を作り、担当メンバーに発注して作業を進めていった。だがすべての作業が予定通りに進むはずもなく、スケジュール調整に追われた。

 さらに同学部では、各チームがまるでライバル企業のように競い合うという。例えば人員が不足すると、自分たちのチームの良さをアピールして他チームから人材を引き抜く。引き抜かれたチームは、その穴を埋める方策を考えなければならない。このように「常にリスクマネジメントが求められた」(杉田さん)。ゲーム制作を通じて、まさに企業のプロジェクトマネージャーと同様の経験を積んだわけだ。

 アクションゲーム「Charlotte」を開発した尚美学園大学の「Team Charlie」も、やはりプロジェクトマネジメントには苦労したという。Team Charlieは、「日本ゲーム大賞2010」(コンピュータエンターテインメント協会主催)出品のために有志によって作られたチーム。情報系、音響系などさまざまな分野のメンバー5人が集まった。朝型のメンバーもいれば夜型のメンバーもいて、全員が歩調を合わせるのは大変だった。

 さらに人員が限られているため、一人で何役もをこなした。プロジェクトを統括した坂内達海さんは、プロジェクトマネジメントに加えてグラフィックスも担当。例えばキャラクターの動きを表現するために、「自前のビデオカメラを据えて自分で録音ボタンを押し、自分の動きを撮影した」(坂内さん)。それをゲームの中に取り込んだ。

 制作には、大学の設備もフル活用した。例えば効果音については、「学内に放送関係の学科があるため、専門の機材が借りられる。これを使って、“生音”にこだわった」(サウンドを担当した田中浩介さん)。歩く足音や、足が地面にこすれる音などさまざまな音を実際に再現し、専用機材で録音。これを効果音に使って、臨場感を高める工夫をしたという。そうした努力が実り、Charlotteは日本ゲーム大賞2010「アマチュア部門」の受賞作品に選ばれた。

 このほかの展示では、AR(拡張現実)や3Dなど話題のテーマに取り組んだゲームが目立った。大ヒット映画「アバター」の制作などでも使用されたソフトを自在に使いこなし、見事な3Dグラフィックスを作り上げる様子も実演されていた。