PR

 AMDは2011年1月4日、同社として初めてグラフィックス機能とCPUコアを統合した新型プロセッサー「Fusion APU」のEシリーズとCシリーズを発表した。「Zacate」「Ontario」の開発コード名で呼ばれていたCPUで、ディスプレイ一体型PCや低価格ノートPCでの採用を見込む。日経WinPCは、E-350を搭載したマザーボードを入手。AtomやAMD製のデュアルコアCPUと性能や消費電力を比較した(参考記事:AMD、CPUと描画機能を統合した「Fusion APU」を正式に発表)。

 AMDのFusion APUの最大の特徴は、新設計のCPUコア「Bobcat」(開発コード名)と、DirectX 11に対応したグラフィックス機能を1つのダイ(半導体本体)に統合した点にある。性能追求型ではなく、妥当な性能を確保しつつ消費電力を抑える設計で、TDP(熱設計電力、実使用上の最大消費電力)はEシリーズが18W、Cシリーズが9Wだ。

 AMD製もIntel製も、一般的なデスクトップPC向けCPUのTDPは、45W、65W、95Wなど(125W、140Wや35Wなどもある)。ノートPC向けでも通常電力版だとTDPは25W、35W程度だ。低電力版には12Wや15Wもあるが、Fusion APUはグラフィックス機能も入れて9W、18WなのでPC用としては相当低いといえる。

 こうした、ダイサイズが小さくて消費電力が低いPC向けCPUとしてはIntelのAtomがある。Atomは、それまでのIntel製CPUの設計(マイクロアーキテクチャー)を流用していない、完全な新設計のCPUだ。投入した順番に関係なく、処理できる命令から先に実行することで効率を高める「アウト・オブ・オーダー」という、PC向けCPUでは一般的な構造を採らず、シンプルな「インオーダー」にするなどして、ダイサイズを抑えている。割り切った設計で、PC向けCPUより格段に消費電力が低い半面、性能はそれほど高くない。

 AMDのBobcatも、同社のPC向けCPUとは設計が異なる。命令デコーダー(解釈部)はPC向けが3ウェイのところ2ウェイで、整数演算やロード/ストアの実行ユニットも少ない。浮動小数点演算ユニットはPC向けが128ビットなのに対し、Bobcatは64ビットだ。全体的に簡素にする一方で、PC向けと同じくアウト・オブ・オーダーを採用している。Atomとは異なる思想で、コンパクトな設計にしたわけだ。

Fusion APUのパッケージ。一般的なデスクトップPC向けCPUに比べて小さい。
Fusion APUのパッケージ。一般的なデスクトップPC向けCPUに比べて小さい。
[画像のクリックで拡大表示]

Bobcatのブロックダイアグラム。従来のPC向けCPUより簡素な構造にして、ダイサイズや消費電力を抑えた。
Bobcatのブロックダイアグラム。従来のPC向けCPUより簡素な構造にして、ダイサイズや消費電力を抑えた。
[画像のクリックで拡大表示]

 このBobcatにシングルチャンネルDDR3-800/1066対応のメモリーコントローラーや、グラフィックス機能を統合したのがEシリーズ(開発コード名はZacate)とCシリーズ(同Ontario)だ。グラフィックス機能は、同社の「ATI Radeon HD 5000」シリーズをベースにしたもので、最新の動画支援機能「UVD3」も備えている。チップセットやCPUが内蔵しているグラフィックス機能でDirectX 11に対応しているのはFusion APU以外に無い。AMD製CPU用チップセットの「AMD 890GX」や「AMD M880G」はDirectX 10.1対応だし、Sandy Bridgeと呼ばれていたIntelの最新CPUが内蔵している「Intel HD Graphics 3000」「同2000」も同じくDirectX 10.1止まりだ。AMDはこの点をEシリーズ/Cシリーズの売りの一つにしている。下にEシリーズとCシリーズの主な仕様をまとめた。

●AMDの新CPUの主な仕様
ナンバーE-350E-240C-50C-30
開発コード名ZacateZacateOntarioOntario
コア数2121
動作周波数1.6GHz1.5GHz1GHz1.2GHz
2次キャッシュ1MB512KB1MB512KB
内蔵グラフィックス機能Radeon HD 6310Radeon HD 6310Radeon HD 6250Radeon HD 6250
内蔵グラフィックス動作周波数500MHz500MHz280MHz280MHz
シェーダー数80808080
TDP18W18W9W9W

 TDP18WのEシリーズは2コアのE-350と1コアのE-240がある。動作周波数はE-350が1.6GHz、E-240が1.5GHzだ。E-350の2次キャッシュが1MBなのは単純にコアが2個あるため。各コアで512KBずつ備えている。内蔵グラフィックス機能の動作周波数は500MHz、シェーダーは80個だ。単体のグラフィックスチップでいえば、ノートPC向けの「ATI Mobility Radeon HD 5430」(550MHz、シェーダー80個)やデスクトップPC向けの「ATI Radeon HD 5450」(650MHz、同80個)が近い仕様だ。CシリーズはCPUコアとグラフィックス機能の動作周波数が低い。

 Eシリーズ/Cシリーズは、新開発のチップセット「AMD A50M FCH」(開発コード名はHudson-M1)と組み合わせて使う。Serial ATA 6Gbps×6、USB 2.0×14、PCI Express 2.0 x1などのインターフェースを備えているが、USB 3.0には非対応だ。AMDはEシリーズ/CシリーズとAMD A50M FCHの組み合わせを「Brazosプラットフォーム」と呼んでいる。

Brazosプラットフォームの構成例。外付けグラフィックスチップも追加できる。
Brazosプラットフォームの構成例。外付けグラフィックスチップも追加できる。
[画像のクリックで拡大表示]