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 京都文化協会とキヤノンは2011年2月8日、国宝「風神雷神図屏風」(俵屋宗達筆)の高精細複製品を、原作品を所蔵する建仁寺へ寄贈した。

 寄贈は、京都文化協会とキヤノンが2007年に立ち上げた文化財の保存・高精細複製品の活用を目的とする社会貢献活動「文化財未来継承プロジェクト(「綴(つづり)プロジェクト」)」の一環として実施された。同プロジェクトでは、キヤノンの持つ撮影、画像処理、出力の技術を使う。印刷した後、現在の印刷技術では再現が難しい金箔などの部分や表装を伝統工芸職人が担った。風神雷神図屏風の複製品は2009年7~12月の6カ月間で制作。日本貿易振興機構(ジェトロ)の依頼により「2010年上海国際博覧会(上海万博)」の日本館に出展された。

 都内で開かれた寄贈式に登壇したキヤノン副社長の田中稔三氏は「上海万博では540万人が日本館を訪れ、この絵を鑑賞した。かけがえのない日本の文化財を世界に発信することで日本の文化発展に貢献できうれしい」と挨拶した。

 特に、キヤノンが受け持った撮影、画像処理には、それぞれ最新技術が使われたという。撮影では、高精細データを取るために、多分割撮影を実施した。2つ折りになっている屏風のパネル1枚(一扇)を20の撮影エリアに分け、旋回台を取り付けたデジタル一眼レフカメラ「EOS-1Ds Mark III」を使用して撮影。1つの撮影エリアの画像は約1000万画素。屏風全体では80の撮影エリアとなり、約8億画素に上るという。分割して撮影したデータをパソコン上で1つのデジタルデータに仕上げる。独自のカラーマッチングシステムを用い、忠実に色を再現した後、同社の大判インクジェットプリンター「imagePROGRAF」を使って出力した。

 「綴プロジェクト」で複製した作品数はこれまでで15作品。16作品目となる風神雷神図屏風の複製品は国内初公開。二曲一双の屏風で、大きさは一隻(せき)が縦176×横194cm。和紙に印刷し、金箔を貼り付けている。