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 ソニーは2011年5月19日、現実の風景や物に、CGや動画、文字などのデジタル情報を付加する「拡張現実感(Augmented Reality)」(以下、AR)の新技術「SmartAR」を発表した。特徴は、マーカーレス方式を採用し、対象物の認識・追従が速いこと。空間も認識してデジタル情報を表示する。ARを直感的に利用するユーザーインタフェースも開発した。

 ARとは、目印となるマーカーや対象物をカメラで写して認識させ、カメラ越しにデジタル情報を表示する技術。全てを仮想空間で再現しようとするVR(Virtual Reality)と異なり、現実の風景を写し取った映像の上にデジタル情報を重ねて表示する。1990年代から研究が進められていたが、近年、スマートフォンや携帯電話の高機能化、インフラの高速・大容量化などITの進化によって、一般の消費者でも利用できる機会が増えている。ARには、バーコードなど特殊な目印(マーカー)を用いるマーカー方式と、写真や物などの一般的な物体を認識するマーカーレス方式がある。

 今回発表されたSmartARは、従来のマーカー方式に対応すると同時に、「物体認識技術」を用いたマーカーレス方式にも対応する。さらに同社が「AIBO」や「QRIO」などのロボット開発で培った独自の「3D空間認識技術」を統合した。そのため同社は、SmartARを「統合型拡張現実感技術」と呼ぶ。

 特徴は、対象物の認識・追従が速いこと。これは、物体認識技術に加え、対象物である画像から抽出した特徴点をマッチングする独自技術と、物体の形状変化に対応した画像トラッキング技術を組み合わせることで実現したという。

3D空間を認識する

 また3D空間認識技術により、現実の空間とデジタル情報を融合させる。そのため、目印となる認識対象物がカメラの撮影範囲から外れてしまっても、その空間にひも付けられたデジタル情報は、表示され続ける。発表会では、認識対象物として設定された写真を認識した結果、ポストペットのキャラクター「モモ」が現れるというデモが動画で披露された。モモが部屋の中を歩き回るのをカメラで追いかけると、認識対象物と設定された写真はカメラからフレームアウトしてしまう。だがその後もモモは消えることがなく、部屋の中を歩き回る様子が表示され続けた。

 3D空間認識技術は、カメラが移動することによって生まれる視差を利用し、現実空間の形状とカメラの位置・姿勢を推定する技術が基本となっている。これを物体認識技術と組み合わせることで、現実の空間の構造を立体的に認識し、記憶できるという。これにより、一度対象物を認識してデジタル情報を表示した後は、認識対象物が写っているかどうかにかかわらず、空間の構造や位置関係を基に、デジタル情報を表示し続けられる。さらに、デジタル情報として表示させたボールが床に落ちて弾む様子など、空間の構造に合わせた情報の表示も可能になる。

ユーザーインタフェースも工夫

 新たなユーザーインタフェースとしては、カメラを通してスマートフォンなどの画面上に表示されたデジタル情報にタッチすれば、カメラで対象物を写し続けなくてもデジタル情報を操作できる「ARインタラクション」技術を搭載している。ARは、認識対象物上にデジタル情報が表示されるため、デジタル情報を見る間はずっと対象物を撮影し続けなければならない場合が多い。一方、ARインタラクション技術では、その必要がなくなる。

 一例として、カフェの黒板メニューを認識対象物としたデモなどが展示されていた。スマートフォンで黒板メニューを撮影して認識させ、認識した対象物にタッチする。タッチしたあとは黒板を撮影し続ける必要がなく、手元で黒板メニューの詳細が書かれたデジタル情報にアクセスできる。また、紙のメニューを認識対象物とした場合も、一度認識すれば撮影し続ける必要はなく、手元でデジタル情報を確認できる。実際には1枚の紙であるメニューだが、デジタル情報では何枚もめくってメニューの詳細を読めるCGが表示される。

 具体的な製品への応用は未定だが、今後スマートフォン上などで動作するよう実証実験を重ね、広告やゲームなどのサービスや、ビジネス用途への展開を図るという。なお、2011年5月20日から5月22日まで、ソニービル(東京都中央区)のコミュニケーションゾーンOPUSにて、SmartARを体験できるイベントを開催する。