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 正しい位置情報を示す「地理空間情報」。それが、東日本大震災でどう利用されたのか。東京大学 空間情報科学研究センター 柴崎亮介教授に聞いた。前回は震災対応や復興支援に地理空間情報を活用した事例を中心に説明してもらった。今回は地理空間情報を実際に活用する際の課題について尋ねてみる。

震災の復興支援に地理空間情報を活用できるようになった背景には、どのような事情がありますか?

東京大学 空間情報科学研究センター 柴崎亮介教授。地理情報システム(GIS)の構築や活用に関する研究活動を行う。宇宙開発戦略本部における準天頂衛星に関する検討会「準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループ」主査を務める。2011年5月、SPAC(財団法人 衛星測位利用推進センター)主催による「衛星測位と地理空間情報フォーラム」にて、東日本大震災における地理空間情報の活用事例と課題を紹介する講演を行った。 (写真:小林 伸)

 一つには、宇宙研究開発関連の技術があります。航空写真は、昔は地上の基準点をリファレンスにして位置を決めていましたが、今ではGPSのおかげで写真と地図が重なる形でリンクしている。カメラに精密なRTK(リアルタイムキネマティック)測量器が付いていて正確な位置情報がただちに分かる。そのため、デジタルで画像を撮ったらすぐに地図に重ねることができ、地理空間情報を活用できるのです。

 また、地図も標準的なインタフェースやフォーマットが確立されたので、それに則って地理空間情報を配信すれば、すぐにパっと地図と情報を重ねられる。このインタフェースは、1990年代後半からISOと、アメリカを中心にした企業団体、OGC(Open Geospatial Consortium)が標準化を始めたものです。日本でもその流れに乗ってきている。

 地理空間情報の分野では、老舗の企業が国際標準を事実上全部押さえていました、みたいなしがらみがあまりないんですよ。巨人がいなくて弱小ばかりだったので、皆で集まって標準を作って打って出て行かないと、この世界そのものがなくなる、という危機感があった。OGCとISOも仲が良くて、ISO/OGCのスタンダードはほとんど同じ内容です。

 そしてそれが2000年代半ばくらいには、サポートしていないソフトウエアの方が珍しいくらいに浸透してきた。基本的には、データフォーマットをガチガチに固めるのではなくて、リクエストするとその地図を画像にして送るといった、Web上でデータを交換するサービスのインタフェース標準なので、あまり縛りがない。相手のリクエストをどう受けて、どういうフォーマットで返すか、という規定だけ。割合、ソフトウエアに実装しやすかったのです。日本でも2005~2011年の間に急速に実装されてきていますね。

 標準化の話は、平時には「それが何の役に立つの」という話にもなりがちですが、震災のような緊急時には、とにかく情報をかき集めて何かしなくてはいけない。その場合、標準化されていない情報に手間を掛けている暇はありません。使えない、ないに等しい情報になってしまうわけです。