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 日経パソコンは2011年10月7日、IT・エレクトロニクス技術の展示会「CEATEC 2011」において、「パーソナルコンピューティング、次の一手」と題したパネルディスカッションを開催した。スマートフォンなどの台頭で、パソコン業界を取り巻く環境が変動する中、従来型のパソコンやネットサービスはどう変化していくのか。パソコン業界を代表するキーパーソン7人が今後の動向や展望など“次の一手”を語った。

パソコンの役割は今後も拡大する

 各種の携帯端末の台頭に対して、NECパーソナルコンピュータの高塚 栄執行役員常務は「パソコンの役割は携帯機器市場の拡大で縮小するどころか、今後も増え続ける」との見方を示した。「パソコンはさまざまなコンテンツを作成できるという、携帯機器にはない創造性に利点がある。携帯端末や家電製品、クラウドサービスなどをつなぐハブとしての役割も担う」とパソコンの重要性を説いた。

 携帯ノートを主軸としているパナソニックの原田 秀昭AVCネットワークス社 ITプロダクツビジネスユニット ビジネスユニット長も、「タブレットなどの携帯端末はビューワー用途が中心だが、パソコンはコンテンツを作成して情報を発信できる」と語り、高塚氏と同様の意見であることを表明した。さらに、携帯端末と携帯ノートの違いについても言及し「同社の携帯ノートであれば、作業現場のような過酷な環境にも対応する」とした。

「いつでも、どこでも」が重要に

 では、パソコンは今後どのように進化していくのか。インテルの宗像 義恵副社長はこの問いに対し、SNSが発達しつつある現在は、こうしたサービスが「いつでもつながり、どこでも使える」ことがパソコンに求められるとの考えを示した。宗像氏が期待を寄せるのは、同社が提唱する「Ultrabook」。Ultrabookは、薄型軽量の新しいカテゴリーのノートパソコンである。休止状態時にデータをSSDに格納する「Rapid Start Technology」機能を備え、待機電力の少ない高速な復帰が可能だ。

 宗像氏は、Ultrabookに搭載するCPUについて触れ「現状の製品では第2世代のCore iシリーズを想定しているが、2012年に第3世代のCore iシリーズ、2013年には「Haswell(ハスウェル)」と呼ぶコードネームのCPUが登場し、順次搭載されていく」との見通しを明らかにした。CPUの世代が進むにつれ、Ultrabookがより薄く、より高速になり、かつバッテリー駆動時間も伸びていくと見込まれる。

 一方、現状のUltrabookのコンセプトだけでは、企業ユーザーのニーズは満たせないこともある、との意見も出された。東芝の下辻 成佳デジタルプロダクツ&サービス 統括技師長は「企業の現場では、有線LANの端子やアナログRGBの端子といった形状の大きな旧型インタフェースが業務に欠かせない」と語る。下辻氏は、同社が販売する本体の最薄部8.3mm、重さ1.12kgのUltrabook「dynabook R631」を例に、「そうした旧型の端子を装備した製品で薄型軽量化を追求するには、素材や構造などの技術革新が必要になる。R631ではハニカム構造のマグネシウム合金を採用したことで、強度を確保しつつ薄型化を実現した」と、薄型ノートの製品開発の難しさを強調した。

パソコンと携帯端末の垣根はなくなる

 パソコンの進化が続く一方で、パソコンと携帯端末の相違は今後薄れていくとの見方を示したのが、ソニーの赤羽 良介コンスーマープロダクツ&サービスグループ VAIO&Mobile事業本部 副本部長。赤羽氏が特に指摘したのがユーザーインタフェース。「携帯端末で標準的なタッチ操作は、パソコンでも一般化する」とした。さらに、携帯端末で有望視されているAR(Augmented Reality;拡張現実)のような技術も、パソコンに取り込まれると予想した。ARとは、PCカメラなどから取り込む映像にデジタル情報を付加する技術のことだ。同社は現在、対象物をシームレスに認識してデジタル情報を表示するAR技術「SmartAR」を開発している。近い将来、このAR技術を同社のパソコンに搭載する可能性があるという。

 赤羽氏は、パソコンの仕様についても言及。従来のパソコンでは事実上、x86アーキテクチャーのCPUやWindows OSの組み合わせしか選べなかったが、「今後は変わっていく。携帯端末のようにARM系のCPUやAndroid OSを搭載した製品が増え、仕様の選択肢が広がっていく」と予測した。実際、タブレット端末など携帯端末の分野では仕様の多様化が進んでいる。

 こうした動きに対し、日本マイクロソフトの香山 春明執行役 常務 コンシューマー&パートナーグループ担当は、「特に法人では、ソフトや周辺機器との互換性、基幹システムの親和性などを重視する」とし、Windows以外のOSを搭載したパソコンの普及には、まだまだ至らないとの認識を示した。

クラウドサービスを中核に据える

 今後もパソコンがパーソナルコンピューティングの中心になるとの認識を示すパネリストが多い中、富士通の齋藤 邦彰執行役員 パーソナルビジネス本部 本部長の認識は、やや異なる。同社が理想の未来像として目指している「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサイエティ」と呼ぶ社会では、ICT(情報通信技術)が機器とクラウドサービスをつなぎ、人々の行動や生活様式をデジタルデータ化するという。

 例えば、パソコンや携帯端末で体重や血圧、運動量など健康に関するデータを集め、クラウドサービスで解析した情報を基に適切な運動方法や食事内容を示すことで、ユーザーを健康的なライフスタイルへと導く、といった具合だ。齋藤氏は、そうした社会では、パソコンや携帯端末は全体の一部に過ぎず、クラウドサービスやネットワーク基盤が重要になるとした。