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 「Jコミ」は、漫画家の赤松健氏が2年前に立ち上げた、絶版コミックを無料配信するサービス。配信サイトで表示する広告の利益を、コミックの作者に還元する仕組みで運営してきた。2012年9月15日には新たに、単行本未収録の希少作品や直筆サインなどの特典付きで作品PDFを提供する「JコミFANディング」を開始した。新サービスの狙いを赤松氏に聞いた。

■JコミFANディングを開始した経緯を教えて下さい。

 2年前にJコミを始めた当初は、絶版コミックを無料のPDFデータとして提供する取り組みを行いました。PDFに広告を入れることで収益を得ることを考えたのです。しかし、広告がうまく集まらず成立しませんでした。広告代理店に聞くと、内容を固定した広告をPDFに収めたい広告主はいないと言います。Webバナーのように一定期間で表示内容を切り替えられる仕組みが必要だというのです。

 そこでWebブラウザーで作品と広告を表示する現在のJコミの形が出来上がりました。とはいえ、その方法では「コミックを手元に置きたい」という読者の所有欲を満たせません。また万が一、Jコミがなくなってしまったら、貴重な作品を読めなくなってしまう可能性もあります。

 JコミFANディングはそうした問題を解決しつつ、漫画家がさらに大きな収益を得ることを目指したビジネスモデルです。ベンチャー企業がサービス開発をするための出資金を募るクラウドファンディングからアイデアを得ました。

 具体的には単行本未収録作品やサイン色紙など特典付きのPDFを購入してくれる支援者を募ります。今回は直筆サイン付きで50人、サインなしで50人という制限を付けました。価格は1000~2000円です。

漫画家/Jコミ社長 赤松 健氏:1968年生まれ。1993年、講談社漫画賞新人賞に入選し漫画家デビュー。週刊少年マガジンで『A・Iが止まらない!』『ラブひな』(第25回講談社漫画賞受賞)を連載し、一躍人気漫画家に。柔らかく美しいタッチのキャラクター、ギャグの利いたラブ・コメディーで圧倒的な人気を得る。同誌で2012年3月まで『魔法先生ネギま!』を連載。2010年、絶版マンガの電子書籍を無料配信するために株式会社Jコミを設立し、代表取締役社長に就任した。(撮影: 木村 輝)
漫画家/Jコミ社長 赤松 健氏:1968年生まれ。1993年、講談社漫画賞新人賞に入選し漫画家デビュー。週刊少年マガジンで『A・Iが止まらない!』『ラブひな』(第25回講談社漫画賞受賞)を連載し、一躍人気漫画家に。柔らかく美しいタッチのキャラクター、ギャグの利いたラブ・コメディーで圧倒的な人気を得る。同誌で2012年3月まで『魔法先生ネギま!』を連載。2010年、絶版マンガの電子書籍を無料配信するために株式会社Jコミを設立し、代表取締役社長に就任した。(撮影: 木村 輝)
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■9月15日に開始した際の反応はいかがでしたか。

 第1弾としてJコミで人気のがぁさん先生の作品セットと、私の「ラブひな」のセットを用意したところ、用意した2つの作品セットは募集開始からわずか20分で定員に達しました。

 がぁさん先生をご存じない方もいるかもしれませんが、Jコミのランキングでは常に上位に入っていて、漫画マニアには絶大な人気があります。作品の内容も素晴らしく、もっと評価されて然るべき漫画家です。Jコミで、がぁさん先生を初めて知ったという人も多いのです。Jコミを立ち上げることで、このように新たに脚光を浴びる漫画家が出てくることを目指していたのでうれしいですね。

JコミFANディングで配信した、がぁさん氏の「がぁさん作品×8本PDFセット」。発売直後、即座に定員に達した
JコミFANディングで配信した、がぁさん氏の「がぁさん作品×8本PDFセット」。発売直後、即座に定員に達した
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■人数制限を少なめに設定した理由は何ですか。

 理由の一つは、プレミア感を持たせること。1万人に配信するとなれば、価値が少し薄れてしまうわけです。同人誌の即売会でも有名サークルが50部限定といった形で売りだせば価値が高まりますよね。

 運用上の理由もあります。JコミFANディングのPDFデータには電子透かしを使って、支援してくれた人のデータを埋め込んでいます。こうすることで、ソーシャルな意味で違法コピーの抑止力となるからです。この電子透かしを入れる作業に手間がかかるため、もし数千人の応募があったとしたら、現状では対処が難しい状況です。

■今回の結果で見えてきた課題はありますか。

 申し込みの際、作者への応援コメントを書いているうちに定員オーバーになってしまったという意見をいただきました。これは今後の反省点です。料金や告知の方法などを含め、今後改善する策を考えていきます。

 例えば、定員を200人に増やせば、もう少し緩やかになるでしょう。金額に幅を持たせる可能性もあります。クラウドファンディングの「Kickstarter」では申し込みをする支援者が金額を選べます。それと同じように500円、1000円、5000円などと金額を複数設定する手もあります。一定時間までは超高額だけど、時間が経過するにつれてだんだん金額が下がっていくという「逆オークション」も考えられます。これらは引き続き研究課題としていきます。

 熱狂的なファンからお金を集めるのは道義的にどうかという人もいます。しかし、昔は作品を出していたけど今は廃業状態になっているという漫画家さんが、最近かなり増えてきています。奮起してまた次回作を描こうとなっても、再始動には資金が必要になりますよね。そうした漫画家さんを、過去の絶版書を利用して支援していけるサービスに育てたいと考えているのです。