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 東京大学は2013年2月22日、インターネット上で誰でも無料で履修できる大規模公開オンライン講座(MOOC、ムーク)の提供を開始すると発表した。実証実験としてまずは2コースを英語で配信する予定。9月から順次開講し、世界各国から数万人の受講を見込む。

 インターネットを通じた大規模なオンライン講座は「MOOC(Massive Open Online Course)」と呼ばれ、ハーバード大学、スタンフォード大学、プリンストン大学など著名な大学が相次いで参入するなど、教育分野で大きな注目を集めている。主なサービス(プラットフォーム)として「Coursera(コーセラ)」「edX(エドエックス)」「Udacity(ユーダシティ)」などがあり、いずれも2012年にスタート。海外では急速に普及しつつある。

 東京大学が今回採用するのは、このうちCourseraのサービス。2012年4月のサービス開始以来、既に米国を中心とした33大学が参加し、200以上の講座を提供している。1年にも満たない期間で登録者数は270万人(2013年2月22日時点)に達した、最大規模のサービスだという。今回、東京大学を含む29大学が新たにCourseraに参加を表明し、合計62大学になる。国内の大学の参加は初めてのことだ。

 これまでも東京大学では、「オープンコースウェア(OpenCourseWare、OCW)」として、正規の授業の講義資料や講義映像を、インターネット上で無料公開してきた。同様の取り組みは、他の大学でも行われている。こうしたオープンコースウェアとMOOCの違いは、前者が「授業資料の無償公開」であるのに対して、後者は「履修認定も含むオンライン講座の無償公開」であること。具体的には、学内での講義や資料をそのまま配信するのではなく、MOOCに向けた独自の講義をスタジオで新たに収録して配信。課題を提供したり、試験を行ったりして評価まで行う。そして最後まで受講し、一定の基準に達したと評価された者には、修了したことを示す「履修証」が発行される。

 この履修証は、あくまで一定の成績で講座を修了したことを示すもので、「単位」ではない。米国では、Courseraの講義を単位として認める動きもあるというが、東京大学では単なる修了したことの証明にとどまる。ただし、この履修証が、就職や転職の際の自己PRに使える可能性もある。

 というのも、Courseraには履修証を“有効なもの”として権威付けるための仕組みが用意されている。有料で発行する履修証の場合、受講者本人が確かに講義を閲覧し、試験を受け、一定の基準をクリアしたということを証明する「認証」のシステムがあるのだ。具体的には、キーボードを打つときの癖を解析したり、Webカメラによる受講者の映像とパスポートの顔写真を組み合わせたりするなどして、受講者本人を認証する。これにより、履修証によって受講者の成績を証明できることになる。

 この認証付きの履修証は有料で、30~100ドルで発行できるという。一方、無料の履修証は、一定の基準を満たした受講者にPDFで発行されるだけで、受講/受験したのがその本人であるかどうかの認証はされない。東京大学では現在、履修証の発行手続きをどのようなものにするのか検討中だという。

 東京大学が9月に開講するのは、政策ビジョン研究センター安全保障研究ユニット長・大学院法学政治学研究科 教授の藤原帰一氏による「戦争と平和の条件(Conditions of War and Peace)」と、カブリ数物連携宇宙研究機構 機構長・特任教授の村山斉氏による「ビッグバンからダークエネルギーまで(From the Big Bang to Dark Energy)」。いずれも英語で配信する。

 東京大学 副学長・教育企画室長の吉見俊哉氏は、「それぞれの分野の世界的なトップランナーで、英語で魅力的な講義をできる、グローバルな教養人を選んだ。これが東大の授業だということを示したい」と意気込む。また、東京大学 理事(広報担当)の江川雅子氏は、「残念ながら、東大も世界ではまだ十分に知られていない。今回の取り組みには、今までリーチできていなかったところへ東大の教育サービスを知ってもらうという意味がある。そして大学の国際化をさらに進めたい」と実証実験の狙いを説明した。