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 デジタル教科書教材協議会(DiTT)は2013年6月17日、「ビジョンからアクションへ! ICT教育で世界をリードする!」と題したシンポジウムを開催した。事務局長を務める、中村伊知哉慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授は「DiTTは活動を始めて3年目になるが、この1年で場面が転換した」と挨拶。以前は教育へのICT活用に懐疑的な意見が多数上がっていたが、ここへ来て政府からも1人1台環境の推進などの方針が出されたこと、東京都荒川区や佐賀県武雄市といった複数の自治体が取り組みを始めたことなどを挙げ、「“やるかやらないか”ではなく“どうやるか”」(中村氏)を考えるべき時期に来ているとした。

 パネルディスカッションでも、それを裏付ける話題が多数出された。自由民主党の山際大志郎衆議院議員は、2013年6月14日に政府が発表した「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」の内容を紹介。「産業競争力の源泉となるハイレベルなIT人材の育成・確保」という項目の中に「ITを活用した21世紀型スキルの修得」が挙げられており、「2010年代中に1人1台の情報端末による教育の本格展開に向けた方策を整理し、推進する」との文言を盛り込む。「“推進する”と踏み込んだ表現をしている。行政としては“川は渡った”と言っていい。あとは実行あるのみだ」(山際氏)。

 多くのパネリストが言及したのは、モデルケースを作ることの重要性。例えば、佐賀県武雄市のICT教育推進協議会座長を務める、東洋大学教授の松原聡氏。武雄市は、市内の全小中学生にタブレットを配布する方針を打ち出している(関連記事)。「武雄市ではまず、2つの小学校だけタブレットを配布した。すると、それを目にした周辺の学区の保護者が“ずるい”と言い始めた」(松原氏)。身近にタブレットがあり、子どもたちがそれを使って喜んで勉強していることが分かると、保護者も前向きになるという。実際に、タブレット導入後に学力が上がったことを示すデータも出ていると紹介した。

 立命館大学教育開発推進機構教授である陰山英男氏も、あえて「完全なる不平等を作る」ことが必要と話す。「水は、高いところから低いところに流れる。効果の高いところにタブレットを導入する」(陰山氏)。これによって、そのほかの自治体への波及効果が期待できるとする。

 視力の低下への懸念など、否定的な意見を説得するためにも、モデルケースは重要。例えば自由民主党内でも、「タブレットは自宅に持ち帰ることもできて、学習以外にも使える。こうした端末を公金を使って無償配布してよいのか」といった意見が出ているという。山際氏は「この懸念は払拭されていないので、自治体を募って、成功するモデルが作れれば」と話した。

 DiTTでは、教育でのICT活用を推進する自治体を100カ所募集中。この地域でさまざまな施策を重点的に実行する計画だ。「まだ予算措置がなくてもいいので、やる気のある自治体に名乗りを上げてほしい」(中村氏)。同時に、この分野で先進的な取り組みをしている教員100名を「スーパーデジタル教員」に選定する取り組みも発表。自薦、他薦を問わず募集する。スーパーデジタル教員が作った優れた教材については、全国の学校への普及を支援するという。

 タブレットや教材の費用についても話題になった。中村氏は、ある自治体の首長から「1人当たり年間1万円で、使える環境を用意できないかという相談を受けている。もし民間の力でこうした設計ができるなら、話に乗る、という人がいる」と明かす。これから、武雄市で使う機種選定をするという松原氏は、タイでは1台当たり約80ドルのコストで端末を配布したという事例を紹介。国内でも、1万円を切るレベルが望ましいとの見方を示した。

 シンポジウムではこのほか、各地の学校で実施した実証実験の成果報告なども行われた。資料は、DiTTのWebサイトで公開している。

デジタル教科書教材協議会
シンポジウムでの発表資料