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 コンピューターやインターネットなど、ITの仕組みや活用法を学ぶ高等学校の必履修教科「情報」。これを現役大学生が教える授業が、2013年7月17日に開催された。愛知教育大学教育学部の学生が教師役を務め、愛知県立幸田高校の3年生に対して90分の授業を実施。普段の授業とは異なる切り口で、高校生に教科「情報」の魅力を伝えた。

 愛知教育大学と幸田高校は、約10年前から高大連携の取り組みを続けてきた。今回の授業も、その一環だ。教師役となったのは、実際に教科「情報」の教員を目指す学生。教科「情報」は高校での授業時間数が少なく、「教育実習に行っても、実際の授業をあまり経験できないことが多い」(愛知教育大学教育学部情報教育講座の齋藤ひとみ准教授)。幸田高校との取り組みは、授業の経験を積める貴重な機会という。

 幸田高校にとっても「普段の授業では取り上げられない内容を扱ってもらえるのでありがたい」(中村勝英校長)。「教科『情報』には、SNSの利用など、教員と生徒に年齢的なギャップが存在するテーマもある。大学生なら生徒に年齢が近いため、生徒にとっても親しみやすい」(情報図書主任 櫻井雅之教諭)という。

 愛知教育大学の学生たちは、この日のために入念な準備を重ねてきた。まず、「高校生に教科『情報』に興味を持ってもらう」ことを目標に、各自が授業のテーマを考えて他の学生にプレゼン。この際には、日経パソコンが提供する教育機関向けのコンテンツサービス「日経パソコンEdu」などを活用した。最終的には学生による投票を実施し、多くの支持を集めた3つのテーマを選択。学生たちも3つのチームに分かれ、当該のテーマに沿った授業案を作成。当日は、3つのクラスの高校生に対して、それぞれのテーマで授業を実施した。

 1つめの授業は、カラオケを使って、音のデジタル化を学ぶというもの。カラオケの機材を教室に持ち込み、教師役の学生が歌を披露。高校生による採点と、機械による自動採点の結果を照らし合わせ、機械が何をポイントに採点しているかを推測した。そして、アナログとデジタルの違い、量子化・標本化など音をデジタル化する仕組みについて学んだ。

 2つめは、「情報のビジュアル化」について学ぶ授業。ピクトグラム(絵文字)を題材に、図形や色が人に対してどんな印象やメッセージを与えるかを学んだ。高校生はいくつかのグループに分かれ、グループごとにオリジナルのピクトグラムを考案。作成したピクトグラムは全体に披露し、何を伝えようとしているのかを皆で考えた。

 3つめの授業では、PowerPointを使った4コマ漫画制作に取り組んだ。あらかじめ大学生が数十枚のスライドを用意しておき、高校生はその中から3枚を選択。さらに1枚を自分で作成して、4コマの漫画を作る。この作業を通じて、プレゼンテーションなど人に何かを伝える際に構成を練ることの重要性を学んだ。

 いずれの授業も、自ら手を動かす、グループごとに話し合うなどの活動を多く採り入れており、高校生たちは積極的に授業に臨んでいた。授業を担当した大学生にとっては、「時間配分がうまくいかなかった」「高校生に与えた課題が難しすぎた」「用意した題材と、教えたい内容がうまくつながらなかった」などと反省点も多かった様子。ここで積んだ経験を、今後の教育実習などに生かしていくという。