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 サイエンティフィック・システム研究会(SS研)は2013年8月28日、「災害対策からBYOD対応まで、BCPのための最新ICT技術」と題したシステム技術分科会の2013年度第1回会合を開催した。SS研は、大学や研究所など科学技術分野におけるコンピューター利用機関を主体とした研究会。今回は、BCP(事業継続計画)やBYOD(Bring Your Own Device、個人所有機器の有効活用)に関連して、大学の情報基盤における災害対策や、大学でのパソコン必携化に関する講演を行った。

 東北大学 サイバーサイエンスセンターの曽根秀昭教授は、2011年3月11日に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)における東北大学の被災状況や復旧の取り組みを説明した。同大学では地震当日、全学共通情報基盤関係の建物に大きな被害はなかったものの、停電によるネットワーク停止などの問題に直面した。

 東北大学では、1995年に発生した阪神・淡路大震災の報告を基に、十数年前から地震対策を強化していた。機器室を低層階に設置したため揺れの影響が少なかったほか、フロアやラックの耐震補強をしていたことで、東日本大震災の地震でも、一部の部局を除き、機器やサーバーに損傷はなかったという。

 しかし、地震後の停電により、無停電電源装置(UPS)による給電が終わる10分後にはサーバーなどが自動的にシャットダウン。Webサーバーやメールサーバー、DNSサーバーなどが全て止まり、ネットワークが停止した。2日後には基幹ネットワークやサーバー群が復旧し、Webページを通じた情報伝達を順次開始したが、「サーバーが停止している間に、ネット上では『東北大学は終わった』などのさまざまな風評が流れた。無停止の対策や非常時の代替策が必要だった」と曽根教授は振り返る。

 連絡手段の確保も、事前の対策が不足していた点だという。地震直後は電話が不通となり、緊急連絡網の運用も困難になった。「電子メールや学内情報システムも使えない状況で、情報を伝達・共有する方法を準備しておく必要がある」と曽根教授は語る。遠隔地のデータセンターやクラウドサービスといった学外のインフラ活用を検討するなど、基盤設備や体制を多元化し、非常時に備えることが今後の課題だという。

東北大学の被災状況や復旧の取り組みを説明した、東北大学 サイバーサイエンスセンターの曽根秀昭教授
東北大学の被災状況や復旧の取り組みを説明した、東北大学 サイバーサイエンスセンターの曽根秀昭教授
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