PR

 教育システム情報学会は2013年9月2日、金沢大学角間キャンパスで第38回全国大会を開催した。教育分野におけるIT活用について、大学の研究者やIT企業の技術者が、研究や取り組みの成果を3日間にわたって発表する。

 第1日目の基調講演には、学会長である前迫孝憲大阪大学大学院教授が登壇(写真1)。教育現場の情報化におけるインフラの重要性や、海外諸国の動向について言及した。「日本は教育分野における情報化の施策として、フューチャースクール推進事業を進めてきた。生徒1人が1台の情報端末を利用する時代には、通信インフラや管理システムなどにも変化がある」という。

 教育現場の通信インフラについて、「1人1台の情報端末を使うには、2.4GHz帯の無線LANだけでなく、5GHz帯も併用する必要がある。米国では1997年に、教育現場のための周波数帯を確保するなど、取り組みが進んでいる」とその重要性に触れた。

 また、シンガポールの成績管理システムの先進性について、「成績データを分析することで、成績の良し悪しだけでなく、期待値からどれだけ成績が向上したかまで把握し、評価する仕組みが確立されている」と紹介。米国で開発されている、統計分析の手法やWebカメラを利用してテストの不正を防ぐ技術についても紹介した(写真2)。

スマートデバイス関連など多彩なセッション

 全国大会の各セッションでは、教育の情報化についてさまざまなテーマの発表があった。

 金沢大学は、学内における情報化の取り組みについて発表した。セッションの冒頭で登壇した金沢大学総合メディア基盤センターの青木健一センター長は、「なぜ金沢大学は情報化の取り組みがスムーズに進むのか、と聞かれることが多い。それは、総合メディア基盤センターにいる専門家と教職員の連携性が高いことにある」と説明した(写真3)。

 続いてセンターに所属する教員が、基幹ネットワークの刷新や情報システムの仮想化、無線LANアクセスポイントの敷設状況、システム統合などの取り組みを紹介。同大学が2006年に開始したパソコンの必携化の現状についても触れた。

 教育現場におけるスマートフォンやタブレット端末の活用についてのセッションも開催された。大阪大学の森真幸助教は、パソコン向けの言語学習支援システム「Web4u」を、iPad用アプリに移植した取り組みを紹介(写真4)。使い勝手に配慮した画面設計や操作機能を実装。「中国語辞書 tOCM Lite」という名称で、アプリの配信を開始しているという。

 東京福祉大学の舘秀典氏は、課題レポートのオンライン提出時に学生が使用する端末を調査した結果を発表。提出された465件の約69%にあたる321件が、スマートフォンや携帯電話などのモバイル端末からだったという。レポートを提出したシーンにも違いがあった(写真5)。

 大学の情報システム間連携についてのセッションでは、徳島大学の金西計英教授が登壇。四国の8大学が参加するe-Knowledgeコンソーシアム四国が、異なる大学のeラーニングシステムを受講可能にした仕組みについて紹介した。「Shibboleth」と呼ばれる認証連携用ミドルウエアを活用。学生は所属する大学が付与したユーザーIDとパスワードがあれば、ほかの大学のeラーニングを受講でき、単位も取得できる。

 また、九州大学の井上仁准教授はシラバス管理システムと、オープンコースウエア用システムとのデータ連携を実現した事例を紹介した。これまではシラバスと呼ばれる授業内容についての情報を人手で共有していたが、管理の負荷軽減のため、JSON形式でデータを自動共有する仕組みを実現したという。