インテルは2013年9月12日、携帯機器向けの新CPU、Atom Z3000シリーズを発表した。「Bay Trail」の開発コード名で呼ばれていた製品で、従来のAtomとは異なる設計にして性能を高めた「Silvermontアーキテクチャー」を採用している。
従来のAtomは消費電力を抑えるために、読み出した命令を順次実行する「インオーダー」と呼ばれる方式を採用していた。Silvermontは、読み出した順番ではなく処理できる命令から実行ユニットに投入する「アウト・オブ・オーダー」方式を採用。命令の実行効率を引き上げた。アウト・オブ・オーダーはインテルのCoreシリーズなど、パソコン向けCPUでは一般的な方式だ。
Atom Z3000シリーズの製造プロセスは22nm。最大4個のCPUコアと、メモリーコントローラーやグラフィックス機能、USB 3.0やeMMC、SDカードなどの各種のコントローラーを統合し、1チップに収めたSoC(system on a chip)だ。物理的な1個のCPUコアを2個のコアに見せかける「ハイパースレッディング」には対応しておらず、4コアCPUで同時実行できるのは4スレッドまでになる。これまでのAtomは最大2コアで、ハイパースレッディングにより4スレッド同時実行をサポートしていた。
CPUコア2個当たり1MBの2次キャッシュを備える。4コアCPUでは2次キャッシュは2MBになる。メモリーコントローラーはデュアルチャンネルLPDDR3-1067(最大容量4GB)とシングルチャンネルDDR3L-RS 1333(同2GB)に対応する。グラフィックス機能はインテル製の「HD Graphics with Intel Clear Video HD Technology」を搭載。DirectX 11やOepn GL ES 3.0に対応する。4個の実行ユニット(同社の呼び名はEU)を備えており、最大667MHzで動作する。H.264やVC1、MPEG-2などの映像フォーマットのデコードや、H.264のエンコードなどを支援する機能を備える。DisplayPort/eDP出力では最大2560×1440ドット/60フレーム、HDMI 1.4出力は1920×1080ドット/60フレームをサポートする。
チップ全体の電力消費に応じてCPUコアとグラフィックス機能の動作周波数を調整する機能を搭載する。例えば4個あるCPUコアのうち2コアがアイドル状態にあるときに、命令を実行中の残りのコアの動作周波数を一時的に引き上げたり(バースト・テクノロジー)、グラフィックス機能の周波数を上げたりすることができる。
今回インテルが発表した製品では、Atom Z3700シリーズが4モデル、同Z3600シリーズが2モデル。Z3700は4個、Z3600は2個のCPUコアを内蔵している。最大動作周波数や対応メモリーの違いでラインアップを組んでいる。
ナンバー | コア数 | 2次キャッシュ | 最大動作周波数 | 対応メモリー | 最大メモリー転送速度 | メモリー容量 |
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Z3770 | 4 | 2MB | 2.4GHz | デュアルLPDDR3-1067 | 17.1GB/秒 | 最大4GB |
Z3770D | 4 | 2MB | 2.4GHz | シングルDDR3L-RS 1333 | 10.6GB/秒 | 2GBのみ |
Z3740 | 4 | 2MB | 1.8GHz | デュアルLPDDR3-1067 | 17.1GB/秒 | 最大4GB |
Z3740D | 4 | 2MB | 1.8GHz | シングルDDR3L-RS 1333 | 10.6GB/秒 | 2GBのみ |
Z3680 | 2 | 1MB | 2GHz | シングルLPDDR3-1067 | 8.5GB/秒 | 1GBのみ |
Z3680D | 2 | 1MB | 2GHz | シングルDDR3L-RS 1333 | 10.6GB/秒 | 2GBのみ |